ShojiIkura

キリエのうたのShojiIkuraのネタバレレビュー・内容・結末

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

 自分の意思を言葉に出来ず、運命に翻弄され続けた少女が、「歌」で意思を届け、同じように運命に翻弄される人たちに刺さる物語。核となるアイナ・ジ・エンドの「歌」は本当に心震えるし、アドリブで踊ったという浜辺でのダンスを含め、表現者として素晴らしい。彼女の存在が、この映画を成り立たせていると言って過言ではない。
 それと「イワン」の演技も良かった。まるで妖精のような存在感。その分、現実世界に引き込まれた時に悲しさが際立つ。
 一方で、3時間もかけて、それぞれの登場人物の過去と現在を行き来して、それぞれの翻弄された人生を重ねていく一見丁寧な手法なのに、突っ込みどころが多い。まず家のない小学生女児が古墳で生活してたってどうやって?風呂も入れないだろうにその割にはきれいな身なりじゃない?というのがまずあって、その他にも抜けてる部分が多い(小塚家はなぜクリスチャン?なぜ一度しか会っていない姉の彼氏のしかも進学先の大阪へ?いっこのママの恋人はあんなに親切にいっこの進学を支援したのになぜ急に全てやめたのか?震災時石巻にいてその後震災ボラをしていた夏彦はなぜ帯広の牧場に?母や祖母の人生を否定していたいっこはなぜ結婚詐欺に?里親宅に戻ったキリエがなぜ東京で路上ライブ&生活をしていたか?等々)。ちょっと登場人物を拡げすぎたのでは(黒木さん、いい演技してたけどキャラとしては必要なかった)と思う。
 ちなみに児童福祉現場で働く者として言うと、引き取るかどうかは別として、親族関係がないと会わせられないなんてことは全くありません。
 少し、「歌」に頼りすぎたかな、と思う。
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