コーディー

キリエのうたのコーディーのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.8
どうにもならない事に揺られ流される日々を経て今私は何処にいるのか、そんなものを確かめ合う様に巡り巡る人々。
路上に響く歌声、絞り出される祈りが現在や過去、そして未来を照らしてゆく…
まあ余りにもピュア至上な独り善がり感は煩いけどw178分にひたすら充満し続けるエネルギーには圧倒された。

時間の断片を交錯させながら、ここへと至るキリエや、彼女と深く関わる3人の物語を紡いでいく展開は良かったし、特にオリジナル楽曲を素晴らしい表現力で響かせるアイナさんの歌声には心奪われた。
けど物語は懸命に生きる者たちの尊さを護るのに必死と言うか、彼女たちを取り巻く雑音としての社会の描き方も薄っぺらいし、体裁は良いけど美しいだけで響いてこない感覚を自分は拭えなかったです。

アイナさんの歌声や表現力で充分なのに過剰なエモーショナルで飾ろうとする感じが少々肌に合わなかったし、これが岩井俊二監督の美学なんやろうけどカバー曲の選曲然り、寄り添われ過ぎて逆に引いてしまったw
アイナさんや松村北斗さん、広瀬すずさんなど演者さんの憂いを帯びた抑えた演技がとても素晴らしかっただけに、監督の作家性と言うかナルシシズムももう少し抑えてほしかったと個人的にw

と、合わない部分もあったけど3時間の長さが気にならないほど映像や音楽に惹きつけられたし、次から次へと監督とゆかりのある豪華なキャストや異色な配役が違和感なく登場するのも楽しかった。
あとミスチルファンとしては小林武史さんの音楽映画という見方も出来て、なんやかんや至福の音に包まれる濃密な時間でした。