テルヒサ

キリエのうたのテルヒサのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
5.0
キリエの歌声にひたすら魅了される3時間。
過去編では姉のきりえと夏彦のドラマがとても良かった。きりえの少しわがままだけど夏彦を大切に思う気持ちとか。震災当日の自転車乗りながらの電話、橋の上のシーンが良かった。夏彦が謝るシーンはあって良かったし、夏彦のドラマとしても良かった。
東京編ではいっこに感情移入してしまった。女を売って生きる母を嫌っていたのに、結局自分も女を売ってより大きなことをしでかしてしまう、というキャラクターが切なかった。それでも高校時代からのキリエとの友情は本物で、かけがえのないもので、冒頭とラストカット、お参り、ライブを手伝うシーンは美しかった。海岸でキリエが歌ってあげる所がいっこにとってのクライマックスだったから、ラストに襲われるのは罪の精算も兼ねて納得はできたけど、ライブ会場に向かういっこを見て感極まってしまった。
様々な場面に寄り添う音楽、キリエの歌がどれも良い!
樋口真嗣監督は思わず笑ってしまった。
岩井俊二監督の映像センス大好き。手持ちのブレ感と生っぽさ、広い画、高い画などなど。良い映画であることを表現するために必ずしも三脚が必要な訳ではないことが身に沁みた。
映画の半分は音楽というが、まさにその言葉通りで、主人公と音楽の存在がぴったり重なったかのような印象も受ける傑作。
今でも、どこかで、キリエには歌を歌っていてほしい。
テルヒサ

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