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キリエのうたのringoのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
1.7
学生時代に好きだった、映画に興味を持つきっかけになった監督だからと期待して観に行ったけど、この作品をきっかけに嫌いになってしまった。私はもう岩井俊二監督好きとは言えない。ごめんなさい。なんか自分でもショック。

ピクニック、スワロウテイル、リリィシュシュ、ヴァンパイア、リップヴァンウィンクル。学生時代に見て好きだった作品。もしかしたら今見てもちゃんと好きだって思えるのはスワロウテイルくらいなのかもしれない。

(ネタバレ少しあり)

ストーリーのことでは、マオリのことがいまいちわからなかった。女を武器にする仕事から逃れようとしたものの結局女を武器に結婚詐欺とかいう悪いことして男に恨まれて最後も自業自得でしかなくて哀れむこともできず。小説を読めば違ったんだろうか。

感じ方は人それぞれなのであまりマイナスな言葉は使いたくないけど、あとは総じて気持ち悪い&不快。良い場面とか泣けるところとか綺麗な映像とか綺麗な音楽もたくさんあったはずなんだけど気持ち悪い、不快だという心情に掻き消されて何も残ってないや…

映画なんだからそりゃ監督の趣味嗜好が溢れてたっていいんだけども、なんだかこの映画ではそれがストーリーとは関係ないところで“無駄に、露骨に”出てるとしか思えなくてその辺ほんと気持ち悪くて見てられなかった。特に自分が女だからなのかわからないけど不快な気持ちにもなるセリフとか表現がやたら目についた。

強姦されそうになってそれでマオリのこと許してもらえるならと「お願いします」と言わせるところ。あとは妊娠がわかって「産んでもいいの?」と遠慮がちに言うところ。もちろんこのストーリーの中での2人の背景があるし考えすぎなのは承知の上だけど、妊娠して身体を痛めて命懸けで産むのは女性なのに男性に対して産んでもいいでしょうかと下から許可を取るような感じのセリフに思えて嫌悪感。二つともひと昔前では結構耳にするセリフだったかもしれないけど、今この時代にそんなセリフを露骨に使う監督が気持ち悪くて仕方ない。

しかもセリフだけでなく主演女優をやたら脱がす。あの場面で下着姿である意味も、あの場面で下着が見えそうな姿勢にさせる意味も、まるでわからなくて気持ち悪い。

なんか気持ち悪いを連呼してしまってごめんなさいほんと。

あとは最後のフェスの場面とかもなんか、音楽の力!歌の力最高!警察の権力なんかに負けない!を表現するすごい名シーンでしょ!と押し付けてくる感みたいなものを感じてしまって、いや許可取らずに街中でフェス開催したらそりゃダメだろとただただ冷め切った目で見てしまった。もはやそんな自分にショック。自分は良い映画を良いと思えなくなってしまったのかなと若干落ち込んだほど。

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血まみれで花束持って歩くところはピクニックのトラウマシーンとリンクしたし、仰向けで寝転ぶ制服女子2人を観てリップヴァンウィンクルの黒木華とCoccoを思い出した。

岩井俊二監督作品が好きだと思えた学生時代、もしかしたらサブカルに浸る自分が好きだっただけかもしれないあの頃。この映画を観て、良くも悪くも自分はあの頃とは変わっているということを実感した。

映画って人によっていろんな見方があって感想も評価もいろいろ。同じ人が同じ映画を2回観ても観た時の年齢とか観た時の環境とかによって感想が全然変わるし。私がこの映画を学生時代に観てたら、傑作に出会った!とか言ってたかもしれない。そんな気がする。
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