みずいろ

キリエのうたのみずいろのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.5
ストーリーや演出としては物足りなさを感じた。というよりはあの日以降を生きてきた人達の人生をただただ見ている様だった。ドキュメンタリーを見ているような。
本当に3時間弱あったのかと思えるほどにあっという間だった。

歴代の岩井俊二作品をぎゅっと凝縮した作品に感じパンフレットを読み、それが気のせいではないと知り嬉しくなった。

「Loveletter」の舞台である北海道、銀景色。
「スワロウテイル」の歌姫
「花とアリス」「リップヴァンウィンクルの花嫁」の女の友情
「ラストレター」の亡き人への思い

それら全てを感じ取れた。

それもそのはずで、
「ラストレター」で福山雅治さんが演じた乙坂鏡史郎が執筆した「未咲」や乙坂が過ごした学生時代の話から「キリエのうた」が生まれたと知り岩井俊二監督の作品を観る度にいつもどこか懐かしく、登場人物には、いつもどこかで会ったことがある気になっていた理由はそういうところから来ていたのかと腑に落ちた。

アイナ・ジ・エンドさんの歌声が助けを求めるようにも生きていくという誓いにも聴こえルカでありキリエである主人公に選ばれし歌声だった。

予告映像や岩井俊二監督の密着番組「ETV特集 いまここを歩く」を観ても不思議な存在だった広瀬すずさんが演じるイッコ。違和感だった癖のある役柄はスクリーンで見ると違和感がなく、さらっとしつつ暖かく包まれるようなイッコであり真緒里であるあのキャラクターならではでさすが岩井俊二監督だな。と。
イッコがなりたくないと言っていた祖母や母のように女を使い生きていた。そこがなんかとてつもなくグッときた。
イッコは強い子だからきっと生きていてまたふらっと現れてキリエを導いてくれるのでは。と思っている。

岩井俊二監督を知ってからずっと追っかけてきたが監督も還暦だそうで、あと何作品観れるのか楽しみであり、是非健康になるべく長く作品を観させていただきたいと願うばかり。

役者としても歌手としても好きな安藤裕子さんが出ていたのがとても嬉しかった。

【キリエ 憐れみの讃歌】
作詞/作曲 小林武史
「世界はどこにもないよ
だけどいまここを歩くんだ
希望とか見当たらない
だけどあなたが
ここにいるから

何度でも
何度だっていく
全てが
重なっていくために」

この歌詞がこの映画のすべてだと思えるほどだった。
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