たとえ口から出た言葉が喜びであれ、
慰めであれ、無音であれ、
人は叫びにならない叫びを
みな抱え込んでいて、
事情にならない事情を抱え込んでいて、
時空なんか交互に飛び出して、
それでも守りたかった思いや大切な人を、
時に歌として、時に聴衆として、
その表皮をなでるように、
撫でることしかできないけど、
できないからこそ、
お互いの痛みや背景に
そっと寄り添うことができるんだと思う。
冒頭からアイナが歌う度に
スクリーンに吸い込まれるようで、
わたし自身も、
もう触れることもできない、
名前さえ知らない、
居場所も忘れた単語帳のような記憶を
置き換え、慰撫された気がした。
泣けないどこかのわたしを
見つけられた気がした。
ただそれだけの今を、
確信すらない孤独を、
ずっと噛み締めていくんだと思う。
落ちてくる悲しみをなんとか抱えて、
憐れみの笑顔が咲いた時、
幸せはすぐ側にある。