カツセマサヒコ

キリエのうたのカツセマサヒコのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.8
アイナジエンドさんの歌がとにかくすげーーー! 企画書の時点で「歌に説得力があるシンガー」みたいに設定があったとして、それを鑑賞した人にまで違和感なくそう思わせるって相当な個性のある歌声じゃなきゃ不可能だと思うんですよ。そういう意味でキリエはアイナさんじゃなきゃ成立しなかったんだろうなと、ただただその歌声に酔いしれてました。

ーー以下ネタバレ気味なので注意ーー

中盤までは好きな展開だったけれど、後半になって、広瀬すず演じるイッコの存在があまりに軽くなり、もう少しイッコの背景に迫ったシーンが後半にもあればよかったのにな…と、イッコのキャラ好きだっただけに悔しかった。イッコもキリエばりの絶対的な孤独のなかにいるはずで、だからこそ二人はつながりあうのだから、その物語をもう少し見たかったなあ…。

展開的にネトフリのファーストラブを想起するシーンも多くて、しかしそれが悪いこととか比較してどうこうとも思わない、圧倒的な岩井俊二ワールドが心地よかった。ストリートミュージシャンのファッションが古めのステレオタイプ(カラオケの背景動画で出てきそうじゃん村上虹郎)なのが気になったけど、まぁそれもそういう作品といえばそれまでか、と思わせるくらいには脚本もよかった。

震災孤児にフォーカスした要素はこのタイミングで大衆映画として語られたことに意義を感じたし、賞賛したい(語弊あるかも、でも残すべきテーマだと思う)と思いました。

しっかり3時間ある作品、緊張と不穏と歓喜をうまいタイミングで回すから、まったく苦に感じない。それだけでもすごいことだと改めて思いました。そして最後に、やっぱりアイナジエンドの歌声すげー!