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キリエのうたのmityのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.5
180分あった『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、その長さを全く感じなかった好きな映画のひとつ。加えて、岩井俊二監督は好きな監督の1人でもあるから、この映画もその長さに怯むことなく(笑)、観てみた。やっぱり長さは感じなかったな。

掠れた小さな声でなら話をすることが出来るキリエに対し、声が出ない、というのはちょっと語弊があるなと思った。声が出にくい、というのが正確なところじゃないかなぁと。そんなことに引っ掛かりながらも、歌で思いを伝えるキリエにはグッときた。歌でなら伝えられる···キリエにあった別れと出会い、キリエが経験した全てが彼女の歌となって多くの人に届く様に、歌の力を信じている者の強さを感じた。

キリエに対する夏彦の後悔にもまた、違う意味でグッとくるものがあったなぁ。人が人に出来ることは限られてる···それが子ども同士なら、特に。守ってあげたいけど守りきれない、自分の無力さをああいう形で突き付けられるのは、しんどいだろうなと思った。

キリエの現在と過去を行き来しながら、キリエだけでなく、イッコや夏彦の13年間も共に辿っていく本作。彼らの出会いの先にあった痛みを伴う別れ。それでもまた出会い、そしてキリエの歌が人々を繋いでいく。ビターだけど温かいな、そう思ったラストだった。


#68_2023
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