一言でヴェンダースらしい作品と映画好き初心者にも受けそうなバランス感覚に優れた作品。
パレルモシューティングをロードショーで見た以来だし、それ以降のヴェンダースには全く関心を持てなかったけどこれは良かったのでは。
元はユニバーサルデザインのトイレを主題にした短編の企画から始まったようだけど、TOKYOという都市をトイレから様々な偶発性を集めて撮られつつ、かつヴェンダース的な物語の集約を隠しきれてないバランス感覚がとても心地よい。
昔のヴェンダースだと小津的な作品も予想はしてたけど少しちらつかせながら軽妙に崩していってるのにも共感を持った。
スタンダードサイズは一人の人間を主体で撮るにはやはりとても良いしそれを再発見出来たのも良い。
狭い日本の家屋や道、首都高の収まり、浅草駅駅チカの飲み屋、銭湯など日本の土地にはスタンダードの収まりが感覚として持っているのは日本だと三宅唱だけかもしれない。
恵比寿、渋谷の公園から鍋島松濤公園、五反田駅前など不特定多数が集う、公共トイレを手慣れた手付きで磨いていく様も良かった。
鍵閉めたら外から見えなくなるトイレに入ってみたくなった。
別に撮影は良いとは思わないし、美的より即物的に撮ってしまっている箇所もあるのも否めない。
またアニマルズやヴェルヴェット、キンクス、パティ・スミス、オーティス・レディングなどをダイハツのテープ再生可のミニバンという時代錯誤感とヴェンダースの好みを持ってきている
しかしこれは考えようによっては映画初心者向けにも受けそうなバランス感覚を持った作品に相乗効果を与えているともとれる。