よねっきー

PERFECT DAYSのよねっきーのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.6
なんだか背筋の伸びる映画。おれ最近、なんとなく口ひげと顎ひげを伸ばしてたんだけど、さっき思い立って顎ひげ剃っちゃった。これから毎朝ハサミで整えます。あとポンチョ買います。

公衆トイレ掃除で日銭を稼ぐおじさんの話。出勤中はカセットテープでルー・リードを聴き、寝る前は古本屋で買ったハイスミスを読み、仕事の休憩中はフィルムカメラでモノクロ写真を撮る。入浴は銭湯、仕事帰りは飲み屋で「いつもの」……。おじさん、若い頃POPEYE読んでたよね? なんか、意外と感性がシティボーイなんすね……。

おれが映画館を出た直後からロールモデルにしてしまうほど、日々の所作が整頓されている平山さん。その姿は、日々に「選択」があるってことを思い出させる。平山さんって、自分で選べることは、自分で選んでいる。何においても、すべて「感じる」ということを選んでいる。毎朝のルーティンとか、そういえばないなあ、おれ。自分で選べるよなあ、そういうの。

でも、おれらの毎日には当然「選べないこと」もある。天気は毎日晴れじゃないだろうし、毎日通う居酒屋でも、いつもの席が空いてるとは限んない。仕事の同僚も選べないし、急にデカい仕事を押し付けられることもある。そういうイレギュラーによって、その一日はPERFECT DAYからは遠いものになっていくかもしれない。

でもこの映画で「Perfect Day」が流れるキッカケは、あまりに唐突でトンデモないイレギュラーなんだよな。選べないことによって突然、一日が完璧なものになったりする。

ヴェンダースの詩的な台詞回しって日本語だとこういう浮き方するんだな……みたいな発見もあったが、一緒に観た友人は「英語より日本語で言われる方が違和感がないかも」と言ってたので、その感性は人それぞれかも。

何にせよ、一生に一度でも、ヴェンダースの新作映画を字幕なしで劇場で観るって体験ができておれは嬉しかった。日本語が母語ってのもおれが選んだわけじゃないが、ラッキーだったな。
よねっきー

よねっきー