りょうすけ

PERFECT DAYSのりょうすけのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
「PERFECT DAYS」

ロードムービーの巨匠ヴィム・ヴェンダースによって全編日本で撮影された作品。公衆トイレの清掃をする独り身の中年男性の日常を描く。

期待を遥かに超えて素晴らしい作品だった。何気ない日常の繰り返しの映画ではあるが、その中にも何かしらの変化があることを教えてくれる。「何も変わらないなんておかしい」劇中で出てくるこの言葉に尽きる。

物語も去ることながら、撮影、音楽、キャスティングについても素晴らしい作品である。

まず撮影について。車で走るシーンがどの映画でも印象的なヴェンダース作品だが、本作では東京の高速道路を走るシーンが描かれており、これが鮮明に脳裏に残っている。どんな道を撮らせても絵になるのだからさすがである。

また、ヴェンダースとは縁もゆかりもないはずであろう下町の街並みがこれほどしっくりくるのは何故だろうか。

公衆トイレはもちろん、古風な銭湯や浅草駅の地下にある飲み屋や初老の女将が経営するスナック。どれに関しても不満点が出てこない。ありきたりな邦画よりもずっとロケーションがいい。とても海外の監督が撮ったと思えないほどの居心地の良さである。

次に音楽について。東京の街並みと洋楽はアンマッチのように感じるが、不思議なくらいの安定感がある。また使われている曲がどれも良い。劇中の若い登場人物と同じようにその曲に魅了されてしまいそうになる。

最後にキャスティング。役所広司がどの映画でも素晴らしいのは周知の事実であるが今回の役所さんはいつもに増して素晴らしい。「無口で少し堅物そうだけど接しやすいおじさん」を演じさせたら役所さんの右に出る人はいないんじゃないだろうか。

逆にヴェンダースがどうやって役所さんを見つけたのかが気になる。イメージ的には「うなぎ」とか「すばらしき世界」の役所さんが近いかもしれない。パルム・ドールを受賞しているという点からも前者かな?

シネコンでの上映回数があまりにも少なすぎる。UC前橋では珍しいほど人が入っていたしもうちょっと回数増やしても良いと思う。年末ベストを決める前に本作に出会えて幸い。
りょうすけ

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