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PERFECT DAYSのyadokariのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.6
ストーリーはけっこう退屈なんだが音楽の趣味が一緒だった。タイトルの「パーフェクト・デイ」はルー・リードの名曲だし、朝日を浴びながらカーステレオで流すのは「朝日のあたる家」だった。他に仕事仲間の彼女が気に入った曲がパティー・スミスで姪っ子が気に入るのがジム・モリソン。ラストがニーナ・シモンの「フィーリング・グッド」でそれだけで満点を付けたいのだが、ちょっと説教臭い感じがしたのと、そこまで丁寧な生活は息が詰まると思ったからその分減点。
幸田文『木』を古本屋で買うシーンがあるが、まさに幸田文的な丁寧な生活というテーマなんだと思う。毎日のルーティンもその日その日で変化がある一日。まあ俳句生活のようなもんかな。最後の「木漏れ日」という言葉の解説が良かった。同じ木漏れ日はなく、絶えず変化している。

それは神社の木陰で昼食を取り、そして写真を撮ることを日課にしているのだ。デジカメじゃなくフィルム・カメラで。カーステのカセット・テープもそうだけどそういうこだわりがあるというか、ものを大事に使う人なのだ。

仕事は公園のトイレ掃除なんだが、最近のおしゃれなデザインされたトイレは横浜にはあまり見かけないやつだった。浅草という街並みもいい感じなのは、まだ日本の面影が残っているからだろうか?銭湯とか。

そんな役所広司演じる男は、普通の人の生活ができない人(孤独癖とか)というふうに描かれているわけだが、時代に取り残された古いタイプの日本人であり、ヴェンダースならば小津映画のイメージではないかと思うのだ。当たり前の生活だけど丁寧に生きている。
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