トールキン

PERFECT DAYSのトールキンのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
控えめに言って最高な作品でした。ただ、何がどう最高だったのか、それを言葉で表現するのは難しい。見終わった後は穏やかで爽やかで清々しくて優しい気持ちになれたかのような、それらの感情や気持ちで心の中や頭の中でいっぱいになるかのようなそんな余韻を感じることが出来た。

平山という男の朝起きてから、仕事へ向かい、日中は働き、さらに仕事終わりやること、などがルーティンとしてただ淡々と描かれる。その繰り返しで大きな山場は特に無い。それなのに何故ここまで惹きつけられるものがあるのだろう。
役所広司さんのほとんど台詞が無いにも関わらず、その自然体な佇まいや存在感がその要因の一つ。一日の始まり、仕事へ向かうために玄関のドアを開けて空を見上げて微笑む。これはマネしようと思ってもマネできないなあって思える。
役所広司さん全然喋らないなあって思ってたら中盤以降からの姪っ子の登場がこれまでの展開から少し変わっていくのが良かった。

さらにシーンごとのその瞬間の情景に焦点を当てられてそこに見入ってしまうし、風の揺らめき、木々の揺れ、木漏れ日、それらが視覚と聴覚に訴えかけてくるかのような、それがとても心地よい癒しとなるような、そんな描写が良かった。
また、劇中歌として流れるレトロミュージックが初めて聴くのにこちらもまたとても心地が良い。

銭湯に行ってみたくなったり、行きつけの居酒屋や小料理屋に行ってみたくなったり、寝る前に読書するという習慣を取り入れたくなったり、など映画の中に映し出される庶民らしい生活に何故か憧れたり真似したくなるのは何故だろうか。これは自分だけだろうか。
行きつけの居酒屋で店主から「いらっしゃい」じゃなくて「おかえり」と言ってもらえるの何か和んでいいね。

「こんなふうに生きていけたなら」やろうと思えば出来ないことはない。どんな人生を送るか、どんな風に生きるかはその人次第。ただ、簡単に出来ることでは無い気がするけど日々続けることで自分の見える世界はそれまでと違って見えてくるかもしれない。
日々の中ただ時間が過ぎ、毎日がただ過ぎていくけれど、同じ日は来ない。自分が知らないだけで毎日毎日自分の中で、自分の周りで何かしらの変化があるはずで変わらないことなんてない。
日が昇り、新しい1日が始まっていく。そう言わんばかりのラストカットが心に残る。さらに最後の平山の爽やかな、かつどこか哀愁を帯びるかのような表情も心にスッと響いてくる。
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