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PERFECT DAYSのHELLOPANDABOOKのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2

年末、街が少しおとなしくていい、クリスマ⚫︎後の平日、買い物ついでに映画館。まだ見るつもりじゃなかった映画のスケジュールをチェック。映画館、ガラガラ。希望のツーシーター(他の人の移動に邪魔されたりしない2人だけの隅っこ席が好み)が空いてる。よし、映画を見よう!と。そして、この映画。この映画にはいろいろある。好き嫌いが真っ二つにわかれるだろうな。つまらないという人もいると思う。それもまたよし。。その上で、⚫︎まず、ここ何年かの自分の映画鑑賞において『マルジェラが語るマルタンマルジェラ』を見たときの良き衝撃以来となる、素晴らしい衝撃を受けてしばらく立てなかった。笑いあり、感じるものあり、多くを語らないし説明しないけど、見応えあって、これはこれこそ映画だった。⚫︎役所広司さんは好きで嫌いでもないけど、役所広司さんじゃなくてもいいしキャッチーな役じゃないからこそ、役所広司さんにとっても俳優としてこの映画が代表作になると思う。役の中にいた、俳優だ。⚫︎ヴィムベンダース監督は、『パリ、テキサス』と『ランドオブプレンティ』しか見たことないけど、代表作の1つと言われる『ベルリン天使の翼』も見たことないけど、『パリ、テキサス』は何度も見て、直近はアメリカ撮影に行く8月、まさに撮影ルートが『パリ、テキサス』のルートだったから、渡米前に見た。そして帰国の便、デルタに乗り込むとき、エコノミーな俺たちの前をファーストクラスに乗る役所広司さんとすれ違った。取り巻きゼロの、ひとりでいた。まさかこの映画につながるとは。⚫︎俺も東京生活がいつのまにか長くなってしまった。映画に出てくるトイレ、神社、首都高の撮影スポット、隅田川の橋のバンクスポットなどなど、ほぼ撮ったことがあるか、知ってるところだった。大きく旅立ちたいな。⚫︎この映画は、日本人監督ではないのに、日本人監督ではないからこそ、ソフィアコッポラみたいな狙ったクールさでもないからこそ、本質的に、すばらしく東京、日本、民衆を、スタイリッシュに描ききっていた。普通なことを、普通ぽく、アメカジやヨーロピアンや良い感じのカフェとかスタイリングではんぱに気取るのでもなく、本当のスタイリッシュを描ききれている。このライディング、この普通さ、このルーティン、"この音"(録音、プロップス)を真似して、今後、スタイリッシュを新たに提案しようとする日本人監督や俳優がニョロニョロとスネーク野郎、ちょろっつぁん二番煎じで出てくるだろうが、断言する。この映画、このヴィムベンダース監督が、スタイリッシュな東京だ。⚫︎この作品の主人公、感情が少ないんじゃない。感情が希薄で無口なんかじゃない。この平山さんは、感情と思い出と感性がありすぎて溢れ出さないようにしてルーティンな日々を送っている。妹、姪にハグする、あの光景。木漏れ日の下で見知らぬ人に会釈する光景。この平山さんはあいさつもコミュニケーションも優しさも普通にある。感情の溢れ出しを自制してるだけなのだ。だから、彼が1人だけでいる時間の多くは、彼は感情に溢れている。誰かを傷つけなくていい、誰かに傷つけられなくていい、感情と感性のままにひとりで微笑んでいる。この映画を見て、さみしいとか孤独とか不憫と感じる人とは、友だちにはなれなくてもいいや。別の世界でいいや。映画の中でも平山さんが言ってる。それぞれ別の世界があるのだと。だから、それが唯一同じになる空を見上げているのだ。同じ空の下、俺たちは別々の世界を生きているのだ。誰一人同じではないし、同じじゃなくていいのだ。ほっとけよと。⚫︎劇の終盤、おっさん同士の影踏み、おかしかったな。ひとりはガンのステージ4で青色吐息なのに。ゲラゲラ笑ってしまった。そして、いつものように首都高を運転する平山さんを見て、泣きそうになった。マルジェラを見たときの映画館以来、エンドロールの後、無意識に拍手してたよ。映画だったー。2023年の劇場映画をこの作品でシメくくれるのは本当によかった。

唯一、えのもと氏の車中のセリフ、アテレコなんだが、かなり映像とズレてるところ。。。
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