ハル

PERFECT DAYSのハルのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
Christmasのレイト・ショーにて。
渋谷の公園を掃除して暮らす日々、丁寧に仕事をこなし、ひたむきに生きている男の美しさにただただ見惚れる。
ヴィム・ヴェンダース監督×役所広司、二人だからこそ構築できた普遍的な世界観。
とにかく静かな作品、登場人物少なめ、平山(役所広司)に至ってはほぼ無口。
だからこそ、心の奥底に沁みるんだ。

今風ですぐサボりがちな同僚を演じた柄本時生が良いアクセントになっていて、適当なんだけど、どこか憎めない男を好演。
こういったその場の感情のみで動くやつは割と好きだけど、実際近くにいたら凄いイライラさせられそう…
いきなり仕事も辞めちゃうしね。
彼は父である柄本明さんと話した際「役所はうめぇぞ〜」と聞いてきたため、学ばせてもらう心構えで撮影に入ったそうだが、このエピソードは胸を熱くさせる。
ベテラン同士、頑張ってきた戦友を認め合い、称え合っているようで…じんわりさせられるね。

他にも、終盤登場する三浦友和さんもしっかりと存在感を示していた。
平山と気持ちを分かち合いながら川沿いで語り合うシーンが絵になるの。
ちなみに、このまえの東京国際映画祭にて「握手してください!」と話しかけたら快くOKしてくれて、手を握った瞬間フッと器の大きさに飲みこまれた。
温かいオーラを身に宿す、一線でやってる俳優の凄さを実感。
古希を過ぎているのにスタイルもスマートでめちゃくちゃカッコ良かった!

なんてことのない毎日を送れることがどれだけ幸せなのか…尊いのかを改めて教えてくれる作品。
劇中、平山のバックボーンは匂わすだけで、何も明言されない。
それでも彼の辿ってきた人生がくっきりと軌跡になって見える。
役所広司の表情で魅せる芝居、生きていくことの大切さがその所作にすべて表れていた。
日々の小さな変化や出会いを慈しみ、時間を大切に重ねていきたいと感じさせてくれる光の映画でした。

ちなみにこの日の六本木ヒルズはカップルの大群で凄まじい混雑ぶり。
半分以上は外国籍の方々。
英語や中国語が飛び交うワールドワイドな雰囲気の中、新鮮でメモリアルなクリスマスになりました。
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