すずす

PERFECT DAYSのすずすのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

観光映画の名手ヴェンダース監督が見た東京の下町。PFF出身監督が撮った日本映画というか、MTVというか、少し、薄っぺらい印象を受けました。

映画の終わりに示されるキーワードは「木漏れ日」となっていますが、テーマは明らかに「影」で、一見、ミニマルでパーフェクトなルーティンを生きる男に在る、伏せておきたい過去は最後まで語られません。

映画の魅力は音楽。
ルー・リード、パティ・スミス、オーティス・レディング、アニマルズなど、インディのヒット曲が並んで心地よいパーフェクトな日常を彩っています。

以下は物語。

朝、早く起きて、歯を磨き、植木鉢に霧を噴きかけ、表に向かう。自販機で缶コーヒーを買い、車で飲み発進、カセットテープを聴き、スカイツリーを眺めながら清掃の仕事に出掛ける。

清掃の仕事では便器をピカピカに磨き上げ、用を足したい人が来たら、手を止めて譲る。にも関わらず、彼の存在は影の様に、誰にも感謝もされず、振り向かれることすら無い。

昼飯は決まって神社の境内で、サンドイッチ。そして、木立ちの隙間の日差しを写真に収める。

同僚のタカシが女を口説く為に、車を貸し、金まで出してあげる。家出してきた姪のニコを住まわせ、面倒を見る。
しかし、ニコの母で、平山の妹が迎えに来た時、仲違いした父の話となり、施設の父を訪ねないかと問われるが、平山はそっぽを向く。

タカシが突如、仕事を辞めて、2人分働くハメになっても、黙々と仕事を全うする。

ある日、馴染みの飲み屋に行くと、女将が男性と抱き合っているのを見てしまう。
その場を去る平山だが、元夫の男性が追ってきている。元夫は癌を患い、顔を見せに来たのだと語る。
元夫は「影は2つ重なったら、より黒くなるのか」と云い、2人で試すが、平山は影だって、2つあれば、より黒くならない筈はないと、取り乱すのだった。

そして、また朝がきて、平山は元の日常に帰っていく---------

影にも意味がある、そんなメッセージがジワっと滲んでいる。しかし、何故か「木漏れ日」の説明をした終わり方には疑問を抱く。

舞台は大方、浅草付近の下町。『こんにちは、母さん』の舞台と似ています。
早朝、路地を掃除するオバさんに、辛うじて残る日本の情緒が印象的に描かれます。

夢はモノクロームで現実がカラーなのも、ベンダースらしい面白さかも知れない。殆ど喋らない役所広司の芝居が往年の高倉健の様に感じられました。

しかし、東京のトイレ、基い、日本の公衆トイレは、こんなにも綺麗だろうかと振り返ると、『ベルリン』『リスボン物語』『ヴエナビスタ』…ヴェンダース監督は、本当に観光映画が上手いんだなぁと痛感させられ…
あれっ、毎朝飲む缶コーヒーはBOSSで、物語に深みは薄く…宣伝映画じゃん。
どこか、上っ面な日本の臭いがして、薄っぺらい様にも思えてしまうのです。
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