ねむろう

PERFECT DAYSのねむろうのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

2023新作_253


変わらないものなんてない
嬉しいことも、つらいことも


【簡単なあらすじ】
東京・渋⾕でトイレ清掃員として働く平⼭は、静かに淡々とした⽇々を⽣きていた。同じ時間に⽬覚め、同じように⽀度をし、同じように働いた。その毎⽇は同じことの繰り返しに⾒えるかもしれないが、同じ⽇は1⽇としてなく、男は毎⽇を新しい⽇として⽣きていた。その⽣き⽅は美しくすらあった。男は⽊々を愛していた。⽊々がつくる⽊漏れ⽇に⽬を細めた。そんな男の⽇々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を⼩さく揺らした。



【ここがいいね!】
平山という男が日々繰り返しているトイレ清掃という仕事が、淡々と描き出されているわけですが、彼のもとにいろいろな人がやってきてそして去っていく、そんな淡々とした中でも、作品の中でも語られていた「変わらないものなんてない」というメッセージが強く描かれた作品だったと思います。
平山自身も非常に無口な男として描かれていますので、彼が何を考えているのか、彼がどんな人生を送ってきたのかというところは、特に後半の方で他の人によってじんわりと見えてくるだけですが、そんなじんわりと浮かび上がってくる「人間性」というものを捉えようとすると、人はすぐに答えを求めてしまうのだと感じました。
もっと時間をかけて、ちょっとずつ変わっていくものの中に答えがあるような気がしますし、ちょっとずつ変わっていくからこそ奥深く、積み重なったものがあるのかなと思います。



【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
作品の中盤では、平山の姪にあたる女の子が家出をして、一時期平山のもとにやってくるという話があり、そのあたりからなんとなく平山自身の家庭環境が覗き見える感じではありました。
しかし、結局その話はそれでおしまいになってしまって、平山のアイデンティティというか、どんな人物像なんだろうということを常に考えないといけないところは、少し観る側の体力を使わせるような作品だったかなと感じました。



【ざっくり感想】
カンヌ国際映画祭で、役所広司さんが主演男優賞を取りましたけれども、この作品としては、常に移っていくもの、光だったり影だったり、そんなものを抱えながら人間は生きているのかなと感じました。
また、平山の同僚の彼女にテープを聞かせてあげたり、姪に本を貸してあげたり、行きつけの小料理屋の元旦那にタバコやお酒をあげたり、やはり人というものは、自分の一部を誰かにあげて、そして誰かの一部をもらって、そんなことを繰り返しながら生きているのかなとも思いました。
淡々としているような人生の中にも、「深みのある何か」があるんだということに気づかされるような作品でした。
ねむろう

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