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PERFECT DAYSのせっのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

東京のトイレ清掃員として働くおじさんの日常を暖かく見つめる映画。

傍から見ればオンボロアパートに1人で暮らし、公衆トイレの清掃をしている孤独な初老のおじさんだけど、その毎日を不思議なくらい魅力的に見せてくれる。朝の出勤の車の中でカセットを流しながら音楽を聞き、仕事終わりには銭湯と行きつけの飲み屋で1杯、夜は寝落ちするまで小説を読む。

少し古風だけど、やっていることは私達と変わらない日常のルーティーンを送っている。好きな歌をスマホで聞いて出勤し、帰ってから酒を飲んでYouTubeやドラマみながら寝落ちする。ほぼ同じことをしていて、主人公より恵まれた生活をしているはずなのに、この映画の主人公の方が自分より遥かに豊かな暮らしを送っていると思った。

だけど見ているうちに、今まで気づかなかっただけで自分が普通の日常を送れていることは、主人公と同じように最高の日々を送っていたのではないかと思ってくる。自分の日常を抱きしめたくなる年の瀬と年初めに最適すぎる映画だった。来年も最高の日々を送れますように。

あと、主人公の仕事トイレ掃除はもちろん人々の日常を支えている仕事だけど、主人公自身の日常も誰かの仕事やルーティーンに支えられている。朝目覚ましなく起きられるのはおばさんが毎朝ほうきで掃除してるから、毎朝コーヒーを飲めるのはこんなボロボロの自販機にちゃんとコーヒーを補充しに来てくれる人がいるから、主人公に仕事中の密かな楽しみを与えているのはホームレスの謎の踊り。

主人公の最高の日々を支える人達がいて、またその人達にも最高のルーティンがそれぞれにあって、そうやって人が営み暮らしているこの世界丸ごと最高だと思った。

それにしても、仕事中に空を見上げてニッコリ、歩道橋を通る人たちを見てニッコリ、行きつけの飲み屋で他の客を見てニッコリする役所広司見てるだけで涙が出てくる。
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