変わり映えのない日常、変わりゆく人々や街。
当たり前の中に存在する変化し得るものを清掃員平山の日常から描いた作品。
彼のルーティンをひたすら描いている一見単調な構成かと思われるが、日々を追うごとに日常の中の細やかな変化や主人公の感性の解像度が上がっていく様の描写が秀逸だった。
何よりもヴェンダースの東京への愛を物凄く感じる作品だった。海外の監督が描く変にデフォルメされた東京ではなく、この都市の“下町”感を抽出した表現に好感を持てた。
現代を昭和のまま生きているような主人公の周りとのギャップやそれによって生じるユーモア、そして淡々と進む日々。それら全てを吟味したうえでこの作品のタイトルに立ち返るとその所以が分かる気がする。
本や音楽など味わうべきポイントが散見されており、非常に気に入った作品になった。