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PERFECT DAYSのmarin2000のネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

ヴェンダースの思い描く日本が提示された映画だった。
トイレ清掃員が貧しいというわけではないが、築年数がだいぶ経った古いアパートに住まい、日々起こる小さな出来事に心を揺さぶられることなく、自分が大切に思う景色を見て、銭湯に入り、木々の木漏れ日を愛おしむ。
行きつけの居酒屋でいつもの酒を飲み、夜は眠くなるまで本を読む。
読み終わったら一冊だけ週末に古本屋で100円で買う。
そういった日々を我々は見る。

しかし、姪が訪ねてきてから平山の感情に揺れ動きが出てくる。破顔するほどの喜びに満ちた様子や、妹とのやり取りで過去を思い出し涙することもあり、人間らしさを感じる。

全て役所広司という名優が為せる演技で、こういった満ち足りた生活を過ごしたいと多くの人が思うからこそ、映画館へ足を運ぶのだ。

この映画は東京の本当に一部の側面しか映していない。しかしその切り取りから見えてくるのは、我々がおそらく失くしてしまった大切な感情なのかもしれない。ヴェンダース監督の見た東京は美しい。
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