えだ

PERFECT DAYSのえだのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
朝ちゃんと起きて丁寧な仕事してお風呂に入って行きつけのお店に行って本を読みながら寝て休日は掃除をして外にも出かけてパーフェクトデイズすぎるだろ…帰宅してYouTube観ながら風呂はいるタイミング逃してどうすんだよって思いながらまたネットの海に飛び込んで薄ら明るい空を見てやっちまったなってなったりしないんだこの人は…と綺麗すぎる部屋が映るたびに思っていたけど、よくわからない荷物がギュッて詰まった1階の1室が現れたとき親近感みたいなものが湧いた。掃除しきれなくなったのに捨てられないものたちを、まるでないみたいに押入れに詰め込むのと同じことをあの人もしている。それは現実の部屋だけじゃなくて自分自身の頭の中でも同じことをしているんじゃないか。あの部屋は、忘れたくても忘れられない平山の過去なんじゃないか。ニコにあげたOLYMPUSも他の整理できない思い出に紛れてあの部屋の中に押し込んじゃったのかもしれない。あの部屋を探し出すにはしんどすぎてできなかったのかも。
でもニコがいることで、過去を思い出さずにはいられなかった。だから植物のある部屋でもキッチンでもなく整理のされていないものたちが煩雑に詰め込まれた1室で眠るしかなかった。

いわゆる“ていねいな暮らし”系の映画と一線を画すのは、あの1室がある点で、この人はそういった暮らしに憧れてこうなったんじゃなくて、いろんなことを経験していろんなものを取捨選択した結果、自分が良く思うものを良く思える自分でいられるような環境でいるために、ああいう生き方にならざるを得なかったんじゃないか…と感じられる描写が散りばめられていたところ。そう思えた、私には。
木漏れ日をきれいだなって毎日感じられる生活って、環境によっては本当に難しい。視覚的なことじゃなくて、精神的な意味で。

あと“食事”で喜びを得ようとしてなくて、食事にやる気を全振りしている人間としては、かなり質素な食生活に衝撃を受けたんだけど、ダイエット中なのでありがたかったです。
えだ

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