このレビューはネタバレを含みます
影が重なると影が濃くなる。ならないはずがないじゃないですか。
平山は、何かを背負っている。
それがなんであるか、最後まで明らかにされなかったが、家族にかかわる何かだろうか。あるいは、長らく会っていなかった妹を抱きしめ、頭を下げて見送った様子から、もう世の中の表舞台には立てないような行いが過去にあったのか。
平山が眠りにつくと、木漏れ日が浮かび上がる。彼は、影の中で光を見出して寡黙に生きているのに違いない。
彼は、敢えて自分をさげすまれるような立場に置いているように思われる。手を引いた迷子の母親から、その子の手を拭き取って礼も言わずに立ち去られるような。
そんな平山を、頼りにする人がいる。そんな自分を頼りにしてくれる人がいてくれる。平山の涙をそんなふうに感じた。
出演者全員がよかったが、やはり役所広司の寡黙な演技が輝いていた。その演技から、実は平山が元々寡黙だった訳ではないように理解できた。