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PERFECT DAYSのMrSeepのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.1
「木漏れ日、Komorebi」
木々の枝葉の間から差し込む陽光。
言葉通り、木から漏れた光のこと。
枝葉は風によってゆらぎ、その光と影は多様な形を成す。

今年最後の映画は「PERFECT DAYS」と決めていた。
役所広司の素晴らしい演技と、
ヴィム・ヴェンダースの流暢で簡潔な物語が
素晴らしいセッションを奏でた映画だった。

平山の習慣を切り取ったドキュメンタリーかつ、
その中の小さな綻びによって転じた、小さな物語の映画。
ヴェンダースの新しいジャンルは、
日常と人生を映す“ライフロードムービー”だ。

日常と習慣。
生活には習慣が必要だが、単調とも言える。
主人公の平山は、習慣が壊されるのを嫌うけれど、
それが生み出す刺激を好んでいるようにも見える。
人それぞれにある、自分の世界。
他者の世界と自分の世界が交わる違和感、
それを受け入れ、人は生きていくしか無い。
それがこの映画の本質だと思う。

おそらくモノクロパートは平山の夢。
暗示的で断片的な夢。それは綻びとなり、
平山の日常に混ざっていくのだろう。

ガラケー、フィルムカメラ、鍵、小銭(、時計)は
これらは絶対的習慣の象徴として。
朝、近所のおばちゃんの枯れ葉を履く音は
習慣の共存と受容として、暗喩されているのではないか。

ヴィム・ヴェンダースは映画における音楽の力を、
最大限に分かっていると思う。
以下、素晴らしく明示的な楽曲に拍手。
・ルー・リードの「Perfect Day」
・ニーナ・シモンの「Feeling Good」

ちょい役の配役がセンス抜群でした。
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