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PERFECT DAYSのkanappeのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
映画が始まる時、現実世界との境界線を跨ぐのに苦労することもあるけれど、主人公の完成された、素朴で美しい朝のルーティンを、夢中になって見てしまった。
「これはあくまで映画の中の話なんだ」と意識しなくては、現実に戻れない。
まだ戻れていない気がするのは、主人公の目線から見たように、東京が優しく暖かく美しい街だと思ってしまうからなのかもしれない。

通常、現実世界も東京という街も、私が見れば冷たく汚い世界に見えるのだ。
大都会東京、美しくも恐ろしい街。差し迫る人生の選択肢、肩書きや社会通念、お金、宗教と野球。そんなことどうだっていい、心ではそう思いたい、だけれど世の中に仏のような気持ちで生きていける人間など、いくらいるのだろうか?
主人公の平山にとっては、木漏れ日が、目覚めの一杯が、新芽が、百円の文庫本が、日常の全てが、生きているということに対してのささやかな祝福なのである。

「こんなふうに生きていけたなら」、なんか小さくて可愛くなくたって、こんなふうに幸せを感じられる人間になりたい、間違っているのは大抵社会ではなく自分である、本当にそうおもう。

2023年映画納め
役所広司ベストアクト、題名はルー・リード「Perfect Day」より。姪っ子の名前はニコ。
ヴィム・ヴェンダースよ、なぜ日本をこんなにも知っているんだ。
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