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PERFECT DAYSのmoonのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0

♬ あー、なんて 素敵な日だー!♬

平山が玄関から出て来て 笑顔で 空を見上げる度にMrs.GREEN APPLEの歌のフレーズが浮かんで来る…

あー、なんて素敵な映画だー!!
今年 最後に最高の映画を観られた!

心 揺さぶられるって、このことだ。
観てる時も 終わってからも、胸のざわめき、昂まりが溢れ出て 止まらなかった!
この感動を 伝える言葉が 見つからない…


押上の古いアパートに住み
朝、起きると 布団を畳み、夕べ読んだ本を片付け、歯を磨き、髭を整え、趣味の鉢植えに霧吹きで水を与え、制服に着替え、玄関に作った棚から 携帯、免許証、カメラ、車のキー、小銭を取り、そして、腕時計を装着し、空を見上げながら外に出る。アパート前の自販機でコーヒーを買って車に乗り込み飲む。
お気に入りのカセットテープをかけながら仕事場に出掛ける。
そして、清掃作業。その仕事の手際良さよ!正確で誠実な仕事ぶり!
公園の木陰で昼飯。 持って来たカメラで 木を写す。午後 明るいうちに仕事を終える。

帰って来たら誰よりも早く銭湯に行き、帰りに駅地下の飲み屋で一杯。そして、寝る前に本を読み、寝る…

平山という男の一日のルーティンが淡々と描かれる。
その 見事なまでの 美しさよ。
その姿を追うだけで 何故か込み上げて来るものがある!

最初 の仕事に出掛けるシーン。「朝日が当たる家」がカセットテープから流れて来て、朝日が東京を照らし出すシチュエーションに、そして平山のポジティブな表情に 鳥肌が立った!
もう、たちまち世界観に惹き込まれた。

子どものかくれんぼに笑い、迷子の男の子の振り向きに にこりと返し、誰も見向きしない 不思議なダンスを踊るホームレス(田中泯さん)に目を止め、毎日気にする。目と目が合い 会釈。時々公園のベンチで隣り合わせる 一人で昼食をとる女性にも 会釈。風呂に入って来る老人達の話にもニヤリ。野球観戦の者の愚痴にもにこり。謎の○×ゲームも楽しんじゃう。
観てるコチラも思わずニヤリとしてしまう。
そして、使えない同僚のクズっぷりにも 呆れながらも怒りもせず、付き合ってやる…大切なカセットテープの代わりに渋々 お金を貸す…

姪のニコにも慕われる平山。
妹(父親とも)との確執?妹は運転手付きの車で娘を迎えに…平山は実は大きな会社の跡取り?だったのかも…
違う世界に居るという…意味。
妹と姪が去る時の あの涙は…

小料理屋のママの元夫との つかの間の友情?
妻をよろしく…と。その夜は本も読まず…仰向けで物思いにふける平山…

平山の淡々とした日常に飛び込んで来る ちょっとしたハプニングや衝撃。それもこれも、全部 受け入れ噛み締め、愛しさに変えて生きていく平山の日々。木漏れ日の一瞬の輝きにも似た、人々とのささやかな 幸福の時間(瞬間)を 糧に日々を送る…

欠ける事も、余る事もない、平山の日常は まさにパーフェクトな日々!こんな、埋もれてしまうような小さな幸福に満足し、私も生きて行きたい‥まだまだ、欲望だらけだけど。

ラスト、役所さんの表情…圧巻。バックに流れる歌の力強さと共に 忘れえぬエンディング‼️

あの朝 彼の脳裏には それまでの日常を破るような最近の出来事(ニコや妹との再会、アヤからのキス、タカシの離職、ママの元旦那の運命…頼み…)に対する言葉に出来ない感情が渦巻いていたのだろう。それは 過去への後悔も含まれているだろうが、彼の表情からは、悲しみも喜びも 生きていれば巡り会う 平山の 「人生」に対する賛歌であり、力強い肯定であるように感じられ、私はその姿に感動した。

こんな 胸に熱く迫る感動に 久々に出逢えた!
観られて 本当に嬉しい。




渋谷に あんなオシャレで可愛い公衆トイレが あったなんて。是非 訪れてみたい。
そして、今度 清掃員の方を見かけたら
「ありがとうございます」と言おう。


《追記 1月24日》

YouTubeにて「タカシからの留守電」という動画(公式)を発見。数日前にUPされた模様。
内容は 多分、あれ(映画終了)から数日後に平山のガラケーに録音されたタカシからのメッセージ。

聴いていると、タカシの背景の複雑さや人情味、人懐こさ(人恋しさ)の所以が伝わって来る。
そして…この留守電を苦笑い?して聴く平山の顔が浮かんで来る…

…忘れなければ、思い出していれば、生きてると同じ…

タカシにとっては 平山は忘れたくない人…だからこそ…借金は返ることはない。返したいと思い続ける事で、平山を思い出すために…

そんな気がした。



★祝!!アカデミー国際長編映画賞ノミネート!!
これで上映館が増えてくと嬉しい!!
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