kojikoji

PERFECT DAYSのkojikojiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.7
No.1526
2023.12.24視聴

明けましておめでとうございます。
 Filmarksを再開します。よろしくお願いします🙇

 新しい年、最初の映画は、これからの自分にとって何より大事なものを教えてくれたこの映画にしました


ミニマムライフを楽しむ
繰り返す日常
贅肉を削ぎ落とした毎日
「特別」は何もない ただ繰り返す
その中に生活を輝かすシンプルな喜びがあればいい
 毎朝、家を出た時、空を見上げる 変わらない、しかしいつも違った表情を見せる木々と空
車に乗って、まずは朝の缶コーヒー
仕事場に行くまでに聞く宝物のカセットテープ
トイレ掃除で発見した⚪︎×ゲームによる会話
1日の疲れを気持ちよく流してくれる銭湯のぶくぶく
場末の居酒屋で飲む一杯の酎ハイ、そして珠玉の時間、就寝時の読書
こんなに喜びがある。
そんな生活をすればいいと思う

 大事なのは「仕事」

 彼のこの日常を支えるのは、実にシンプルな、しかし全ての要素が詰まっている象徴的なトイレ清掃という「仕事」
 彼は自分の精神そのものを磨くように一心にトイレを、壁を、床を、磨いていく 磨く作業は何時間、何回、何日、何年、繰り返しているうちに研ぎ澄まされた形となり、技術となって、美しい「仕事」に仕上がっている  
 そのものが美しい、「仕事」はこうありたい
 それを極端にトイレ清掃という仕事で象徴させている
 仕事が終わると、心地よい疲れ以外、自分の中には何も残らない
そんな仕事

 もちろん、日常は時に壊される
仕事の同僚が突然仕事を辞めて二人分の仕事をしなければならなくなる
家出した姪が突然彼を頼って家にくる
行きつけのスナックのママの元夫に声かけられて、川縁でタバコを吸い、酒を飲んで、影踏みで興じる
そんなことが時に起きたりする
しかし、やっぱり彼の日常はシンプルに元の形に収束する

映画はこれをドキュメンタリーのように追っていくのだが、決して退屈しない、と言うより面白く、心地いい

 ヴィム・ヴェンダース監督と言えば小津監督作品の影響が大きいと言われているのは周知の事実
実際、この映画も小津監督へのオマージュ作品と本人が語っている
 確かに、主人公の苗字は、「秋刀魚の味」の笠智衆と同じ苗字「平山」だ
と、言われても私にはこの映画のどこに小津監督が見えるのか、わからない

 映画のオープニング、近所のおばさんの羽箒の音で目覚める平山 このシーンはたまたま撮影時に遭遇して使うようにしたらしい 決してヤラセではないとのこと
しかしあまりに出来過ぎている 私はそのことを本で読んでいたので自然に感じることができたが、果たして何も知らない観客に自然に映ったろうか 監督が憧れる東京の下町の朝として

彼の日常が始まる
まだ明けきれない東京、仕事場へ車を走らせる平山がかけたカセットテープは、なんとアニマルズの「朝日のあたる家」
このシーンで心を鷲掴みされた
もうそのあとは完全に平山の日常へ埋没する

 映画を復習するため、カセットテープの一覧を探した
ラスト、ニーナ・シモンがいい ここで流す?!

締めは役所広司の泣き笑いのアップ
役所広司、何回褒めても褒めたらないから、今回は褒めない

平山の収集したカセットテープの一覧を書いてみた
・The Animals "House of the Rising Sun"
・The Velvet Underground "Pale Blue Eyes"
・オーティス・レディング "(Sittin’ On) The Dock Of The Bay"
・パティ・スミス "Redondo Beach"
・ルー・リード "Perfect Day"
・The Rolling Stones "(Walkin’ Thru The) Sleepy City"
・金延幸子"青い魚"
・The Kinks "Sunny Afternoon"
・ヴァン・モリソン "Brown Eyed Girl" 
・ニーナ・シモン"FeelingGood"
 
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