役所広司の顔面の演技力ハンパねぇ！トイレの清掃員の日常をただ追いかけただけに見えるが、極力余計な情報を排除することで想像で補う余地を残すヴェンダース節も随所に。ルーティンを繰り返すばかりでも間違いなく変化はあると感じられる静かな傑作。
素晴らしかったですねぇ。
とにかく役所広司の演技につきます。
もちろんヴィム・ヴェンダース監督の演出力も素晴らしいの一言なんですが、セリフ少なめでこれだけ見入ってしまうのは彼の演技力あってこそだと思うんです。
一つひとつの所作、毎日ルーティンを繰り返しているだけに思えますが、日課はブレない動きを見せ、突如巻き起こる想定外の出来事にはその場その場で彼の喜怒哀楽を静かに見せます。
劇中で印象的なのは役所広司演じる平山の随所で見せる笑顔の優しさです。
彼がどんな人生を辿ってきたのかは想像することでしか補完できません。
ただ、その想像が自由でいいだろうし、だけど彼の周りの人々や親戚関係などから推理するのが楽しくなる設計にしてるんですよね。
数多くの良質なキャストが所々彼をアシストしていくわけですが、特に印象的なのは柄本時生、石川さゆり、三浦友和あたりでしょうか。
ほんの一瞬しか出番がなかったようなキャストですら、日本の映画好きが好みそうな俳優を起用しており、キャスティングが絶妙だとも思わされました。
日本の公衆トイレ事情は、感想を眺めていると各人思うところはあるでしょうが、トイレの清掃員の日々の苦労を知るという意味では十分でしょう。
そんな彼のような仕事をする人がいて、長井短演じるOLのような人もいて、平山が通う居酒屋の店員もいる。彼らそれぞれに物語があるわけで、他人の人生にある意味リスペクトができるようにもなるわけです。
セリフが少ないからこそ、こちら側は様々な感情が呼び起こされるのです。
〈キャスト〉
平山正木(役所広司)
タカシ(柄本時生)
アヤ(アオイヤマダ)
ニコ(中野有紗)
ケイコ(麻生祐未)
ママ(石川さゆり)
ホームレス(田中泯)
友山(三浦友和)
竹ぼうきの婦人(田中都子)
酔っ払いのサラリーマン(水間ロン)
子供(渋谷そらじ)
子供(岩崎蒼維)
迷子の子供(島崎希祐)
母親(川崎ゆり子)
赤ちゃん(小林紋)
神主(原田文明)
旅行客(レイナ)
番台(三浦俊輔)
銭湯の老人(古川がん)
かっちゃん(深沢敦)
常連客(田村泰二郎)
居酒屋の店主(甲本雅裕)
年配女性(岡本牧子)
レコードショップの店員(松井大悟)
レコードショップの客(高橋侃)
レコードショップの客(さいとうなり)
レコードショップの客(大下ヒロト)
野良猫と遊ぶ女性(研ナオコ)
OL(長井短)
地元の年配男性(牧口元美)
地元の年配男性(松井功)
でらちゃん(吉田葵)
写真屋の主人(柴田元幸)
古本屋の店主(犬山イヌコ)
バーの常連客(モロ師岡)
バーの常連客(あがた森魚)
女子高校生(殿内虹風)
ケイコの運転手(大桑仁)
電話の声(片桐はいり)
タクシー運転手(芹沢興人)
駐車場係員(松金よね子)
佐藤(安藤玉恵)
※2023年新作映画171本目
