ねこみみ

PERFECT DAYSのねこみみのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
元旦は絶対に素敵な気持ちになれそうな映画を観たいのでこれにしてみた🌱

ヴィム・ヴェンダース、「パリ、テキサス」しかみたことないけど、めちゃくちゃヴィム・ヴェンダース!!

日本人以外が日本を舞台にした日本語の映画をつくるって、台詞回しのニュアンスとかどうなるの?うまいこといくのかな???と思ってたけど、そうか、そもそもあまり喋らないんだ。
「パリ、テキサス」のイメージからいくと、ほとんど静かな時間が流れていって終盤喋りだすのだろうなと思っていたらその通りでした。

浅草から隅田川を渡ったところ、江東区エリアの質素な古いアパート(とはいえ二階建!すげえ)。あのエリアは車が入りにくい細い道の間に、木造の古い家が所狭しと並んでるんだよね。
平山さんの家、無駄なものがないミニマリスト的な感じかと思いきや、台所の後ろのスペースにはものが溢れかえっていて生活感満載。

ヴィム・ヴェンダースのことよく知らないけど、日本が大好きなんだなあと思った。
畳、布団、拾ってきた木の子供たち、ご近所さんの箒の音、ドライブのお友の缶コーヒー、お昼に必ず訪れる神社、駅の雑多な居酒屋、時間もエネルギーもない日のカップヌードル、銭湯、コインラインドリー、昔ながらの写真屋、店主が友達のように話しかけてくる古本屋、スナックのような小料理屋。寡黙なおじさん、そして綺麗なトイレ。
キャストも、役所広司、柄本時生、三浦友和、石川さゆり、、、なんていうか、日本だなあすごく。
この映画全体に日本への好きと憧れが詰まっていたように感じる。

そして、平山さんは「寂しい」というよりも「大好きなものに囲まれて過ごしていて1人でもたのしいが、人が大好き」なんだなあと思った。
他人からみれば何の変哲もなく代わり映えしない毎日だけれど、日々出くわすちょっとした人の優しさやくすっとくる面白い出来事に心が温まる。平山さんはそんな人。
箒の音も、銭湯の常連さんの会話も、タカシの親友がタカシの耳が大好きなことも、見知らぬ誰かとの○‪✕‬ゲームも、平山さんの心に優しく染み込む。
(ところで、タカシの親友のダウン症の子、「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の草太だよな?と思ったらあってました!吉田葵くん、本当に素敵な俳優さん。)

規則正しくまじめに生きる平山さんの毎日を見ていて、「今日はお休みなんだな」とわかった瞬間、なんだかこっちまでたのくなってしまった。

過去になにがあったのかもぼんやりとしかわからないけれど、それでも平山さんは毎日を精一杯楽しんで生きている。
なんだか自分が贅沢をしすぎている気がして、だんだん恥ずかしくなってしまった。観た直後はいい気分になったのに、帰り道自分の人生とめちゃくちゃ比べて1人脳内大反省会をしてしまい、なんだか人生がつらくなった。

最後に表示された「木漏れ日」の説明文。これがこの映画のすべてなのだろうと思った。
木漏れ日のような、人生の隙間にきらめく「今」の一瞬一瞬を描いていたんだ。


追記
映画を観てからオフィシャルサイトを見た。
scrolling book「映画にならなかった、平山の353日」

天才か…。映画になったのは365日のうちたった12日だけ。平山さんは、それ以外の353日も、同じように日々を送っている。

https://www.perfectdays-movie.jp/
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