鰤鰭

PERFECT DAYSの鰤鰭のネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

大好物の"半分くらい意味がわからない映画"に分類できそうなんだけど、こんなに穏やかな気持ちになる"意味わか"映画は初めて。

前半はトイレ掃除の仕事をただ映すだけなのに、ずっと見てられる。仕事内容の説明としてと、平山さんの人物像の説明としてと、物語としてと、同じシーンでありながらもそれらのどこに比重を置いているかが絶妙なバランスで移り変わるのが見事。
日々変わらない日課の繰り返しでありながら、その中にささやかなイベントが訪れる。そこからストーリーが語られそうで直接は語られない。展開しそうでやっぱり普段の日々が続いていく。こうして今までも平山さんの人生は続いてきたのだろうし、これからも続いていくのだろう。とても映画の中では完結しない、一人の男の人生がそこにある感じ。

ところどころ演出がめっちゃ上手いところもあって、ほっぺにキスされた直後に女の子が出ていって、そのドアを開けた時のランプで顔が赤らんで見える、あの一連の流れとか凄い。そのすぐ後の銭湯で口元まで泡風呂に浸かるところも、絶妙にどういう表情にも見えるところとか。田中泯の踊りに、ビルの合間から陽が射してスポットライトになると同時に落ちた影が鏡写りになって美しく見えるところとか。

ほとんど台詞を話さずに、日常の所作だけで平山さんの人物像を伝える演技が凄い。
ラストカットのずっと顔だけの演技はもう色んな感情を混ぜすぎて凄いけど凄すぎて情報としては読み取るのは諦めるくらい、感情が分からない。
とにかく役所広司の演技を味わえる映画でした。

【鑑賞回数】1
【鑑賞履歴】
・2023/12/27 🎞️TOHOシネマズららぽーと横浜
鰤鰭

鰤鰭