ひな子

PERFECT DAYSのひな子のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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都市でまっすぐ立つ青くて大きな木に何度も助けられてきた。それはこれからもずっと続くし、自分も木のような人になりたい。木のような人間になれた時、社会が変化し続けていることも、分からないことだらけのことも、ようやく分かるようになるのだと思う。
渋谷という巨大な町で生活していると、自分のリズムで呼吸できていない日が多い。部屋にいても、オンラインと空洞に意識が持っていかれてしまうことが多い。そんな中で、清掃という身体を使って必要な分だけお金を稼いで生きることを選んだ平山さんは、自分の身体とその届く範囲の時間と出来事をコントロールできている(そして時々コントロールできないことに遭遇する)。毎朝、扉を開けた瞬間の一番新鮮な空気で呼吸をする。
他に何も望まない。公共トイレの通路の天井に映る人の影や、風に揺れる葉っぱのゆらめき、木漏れ日をシャッターにおさめる楽しみがいつも側にあるから。
でもやっぱり、20代の私にとってはリアルではないな、ともちゃんと思えた。
難波のトーホーシネマで、ヴィムベンダース好きの父と、その世代のおっちゃんとおばちゃんが9割の環境でこの映画を見たこと込みで忘れない作品。
デザイン過剰のトイレ問題と、巨大資本日本人による映画ということも忘れずにね。
ひな子

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