「普通」の生活、ただそれだけを、フィルム写真で切り取って積み重ねるように描いた秀作。同じ日々の繰り返しの中にある、影と影の重なりの中にある、きらめきとまどろみ……人生哉。何のストーリーもないが、飽きることなく見入らせられ、朗らかな湯上がり感を得られる。
いや「普通」っぽいだけでこんな生活はもはや大多数の人にはファンタジーかもしれないけど。
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それにしても東京というのはこんなにも一人になれる場所がたくさんあるのだな。
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鑑賞前に「あえてオシャレトイレばかりフォーカスしないほうが作品の美しさが濁らず伝わるのでは」というような評に接しなるほどなと思ったりしたが、見たあとはやはりあれで良かったのではと思うに至った。
そもそも「THE TOKYO TOILET」(渋谷区内のトイレ刷新プロジェクト)自体のPRが作品制作の発端で、当初ショートフィルムの予定がヴェンダース監督の興が乗って長編映画化したというが、納得の出来である。