蒼空

PERFECT DAYSの蒼空のネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ヴィム・ヴェンダース新しいの撮ってたんだ?
役所広司は好きだし見ようと思い予告編は見ずに行く。

パリ・テキサスのように、静寂。


・・・ネタバレ多め






「木漏れ日」や日常の中のその時にしか現れない木々のざわめきや、光のプリズムを愛でる主人公の平山。
朝の空気が冷たい時に出勤する。春はあけの、夏は夜
とでも言うように、変わる時間の色が映画にはある。

平山は無口で、あまり話さないが「雑談をしても仕方ない」というか余計なことは話さない。ダメなタカシが急に辞めたら、タカシはともかく働き手がいない事に激怒して会社に電話する。その時の彼は雄弁でできる上司のようだ。平山はどんな過去があるのか。
それは語らない。

お抱え運転手がいるような家の妹は、嫁ぎ先がというより「そういう家の人々」であろうと思う。平山は妹を大事に思っているのに、認知症の父にはガンとして合わないといい、次第に泣き顔といいようのない怒りのような表情になる。
平山アパートに重ねられて整理のついていない段ボール箱と文庫本とカセットテープ
簡単な布団。
彼はビジネスマンだったのだろうか。銭湯の入浴時間が短い。ヒゲは丁寧に手入れする。

浅草の地下の立ち食いうどん屋を超えた地下商店街。個人的に懐かしい場所だ。

たまに行くスナックのママがウィスキー🥃を勧めない石川さゆりで、良すぎて吹く。そんなスナックあったら行くわー。

金延幸子には驚いた。ヴィム・ヴェンダース マニアすぎ。

スマホではなく、コンデジではなく1990年代ぐらいのコンパクトカメラ(オリンパス μミュー)を使い行きつけのカメラ屋で現像する。
きちんと区分けして片付ける。

「木漏れ日」に匹敵する英語はないので映画の最後に文字で説明文がでる。

NHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」で木漏れ日で遊ぶ安子にアメリカ人ロバートが「このきらきらとした光と影のダンスや、揺れる、木の葉の形、そこから感じる温かみ・・・こういったものを、ひと言で表す言葉は、日本語にしかないものです。」というのを思い出す。

最後の泣いたような平山の心境。美しい朝とできれば変わらないこのルーチンに対しての思いなのか、少し色々あって過去を思ったのか。ここでも朝ドラ「スカーレット」の最終回近くで親しんだ坂道を無言で歩く主人公も思い出した。



海外から見た日本語の響きを映像化したような映画だった。





平山についての一方的妄想仮説 その1)

認知症の父親は由緒正しい家の政治家のような人間で、平山は議員秘書で手伝っていたが、父親の汚職事件の責任を押し付けられ、刑務所に入る。質素な暮らしはその延長か。妻とは離婚。出所後実家から、少ない彼の持ち物を段ボールで送られそのまま。若い時の思い出のカセットテープに少し夢が詰まってる。サブスクも知らないしスマホも要らない。

12/25日
某ヨーロッパの映画館
吹き替え無し 日本語



平山:役所広司
タカシ:柄本時生
ニコ:中野有紗
アヤ:アオイヤマダ
平山の妹:麻生祐未
居酒屋の女将:石川さゆり
その元夫:三浦友和
街の老人:田中泯
ギター弾いてた人:あがた森魚


製作: 柳井康治(ユニクロ柳井の次男)


「朝日のあたる家」(The House of the Rising Sun)アニマルズ
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド「Pale Blue Eyes」
オーティス・レディング「ドック・オブ・ベイ」((Sittin' On) The Dock of the Bay)
ルー・リード「パーフェクト・デイ」(Perfect Day)
パティ・スミス「Redondo Beach」
ローリング・ストーンズ「めざめぬ街」((Walkin' Thru The) Sleepy City)
金延幸子「青い魚」
ヴァン・モリソン「ブラウン・アイド・ガール」(Brown Eyed Girl)
キンクス「サニー・アフタヌーン」(Sunny Afternoon)
ニーナ・シモン「Feeling Good」
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