“木漏れ日“、、、
どうしてもヴェンダースの日本愛、小津愛に触れたくて今年最初の劇場鑑賞。
何でもない日常が、人生が、愛おしくなる作品だった。
簡単に言うと、トイレ清掃員の主人公(平山)の日々のルーティンを追いかけるだけの作品。
…にもかかわらず、静かに確実に揺さぶられる日本人魂。
習慣が体に染み付いた平山の目に映るのは、決して単調な毎日なんかじゃない。
びっくりするような変化は無くても、同じ毎日なんかじゃない。
視点を変えれば確実に発見がある。それを見つけるワクワク、見つけた時のささやかな喜び、それこそが人生を彩るのだ。
粛々とこなす清掃作業には仕事に対するプライドすら感じられ、同時に決して手を抜かず無駄のない作業には美しさすら。
平山の清掃後のトイレに入ってみたくなる。
印象に残る劇中歌たちが、尽く心を揺さぶる。如何にもヴェンダースっぽいロードムービーの趣きすら添える。
そして、石川さゆりが沁みる沁みる。
穏やかに、優しく、木々の間から差し込む木漏れ日のように。
それにしても、役所広司×ヴェンダースがこんなにフィットするなんて!
平山に自分を重ねると言うより、気付けば我が夫の未来と重ね合わせて観ていた。
寡黙、几帳面、読書家…。タイプが似てる。
丁寧で穏やかな生活、全てを慈しむ平山的眼差しと生き方が出来れば、争いなど起ころうはずがない。
気づきを与えてくれる作品でもあった。