のん

PERFECT DAYSののんのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
とても繊細で丁寧に描かれた美しい映画でした。
冒頭のセリフのない数十分、役所広司さんの演技だけで物語が進んでいく様が本当に圧感でした。

大都会の隅っこに自分の世界を確立して穏やかに地に足つけて生きている平山さんの日常はどこか儚げだけど温かいものだった。木漏れ日のように予測できないことがふわっと起きても、動じずその出来事を楽しんでいる。平山の生活からは「足るを知る」ってこういうことなのかなって思わされた。また、最近考えていた、「最高でなくてもそれで十分な時もある」というのもきっとこういう生活なのかなと思った。こんなふうに生きていけたら素敵だな
一方で本人が抱える闇や孤独もすぐ近くにあって、そういったものをきっと人は誰しも抱えながら、それでも何事もなかったように過ごしているんだな、きっと平山もその1人なんだろうなと思った。

印象に残っているのは「この世界には、本当はたくさんの世界がある。繋がっているように見えても繋がっていない世界がある。」ってセリフ。姪っ子と妹と順にハグするシーンは、まさにそれが表されてたと思う、自然と涙が出ました。
この世界には繋がっていないそれぞれの世界があって、きっとみんなが一所懸命自分の世界を生きてる。「生きる世界が違う」っていう表現はここ数年よく聞くけれど、生きる世界が違うなら、それぞれの世界を生きればいい、と言い聞かせてきたし友達もそう言っていた。今回映画を見て生きる世界が違っても木漏れ日のように一瞬だけ交わることもあるしそれをその時その時で楽しめば良いのだなと改めて思った。一方でこの世にたくさんの世界があるのならば、たくさんの世界で生きたいとも思った。

すごく考えさせられる映画でした。観てよかったな。パンフレットも買ったのでもう少し余韻を楽しみたい。
のん

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