もりかわ

PERFECT DAYSのもりかわのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

面白かったです…古い木造アパートで清貧に暮らしながらも、読みたい本を黙々と読み、他人と緩やかに繋がる姿は、先行きの見えない都会暮らしをする若造には理想的に映りました。

主人公の規則正しい一日を繰り返し流すことで、彼の生活に訪れる変化と、それに対するリアクションが分かりやすいです。結果的に、観客が主人公の人生を覗き見しているような感覚に浸れる構成が巧みだなぁと思いました。他映画だと『パターソン』を思い出します。ただ、『パターソン』の方が主人公視点のカットが多いのか、もう少しだけ観てる側が没入できる感じがあったような、ないような…。

また、役所広司•三浦友和の演技が圧巻でした。ハードボイルドなおじさん二人が、煙草を吸ってむせる姿、可愛いですね。人生最期に近づいても分からないことが多々ある虚しさと、何もかもが無駄な訳ではないと肯定する姿勢は勇気づけられます。おじさん二人がぜぇぜぇ言いながら影踏みする姿も素敵でした。
何と言っても外せないのは、最後の役所広司の顔芸。すごい、ここまで出来るんだ、と圧倒されます。僕は観ていて、親しい人が亡くなったときの感情を、表情で具現化しているように感じました。

ただ観終わった後に製作の裏側を知り、正直複雑です。清貧な生き方を貫こうとする主人公を描いた映画が、大企業と区のPRによって作られたという構造は、かなりグロテスクに感じてしまいました。PRの内容自体が悪い訳ではなく、主人公の内に見てとられた純粋なものが、人工的に造られたものに感じたのがショックだったんだと思います。(映画は作りものなのに。ただ、嘘を騙し切ってほしかったです。)

でも、そんなケチを一蹴するくらい、僕は好きな映画でした。
もりかわ

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