この作品の予告が劇場で流れ出した頃から…
『こんな作品良いに決まってる』
という想いはあった。
だからこそ鑑賞に躊躇した。
『私に理解出来るだろうか?』
トイレ清掃の男の日常…しかも邦画ではなく洋画。
映画に精通した人にしかわからない世界。
芸術作品…。
躊躇して当然だよね。
チケット売り場でもまだ躊躇っていた。
…で、実際観た感想。
めちゃめちゃ良かった。
役所広司演じるトイレ清掃員平山。
おそらく彼には人生を変えてしまうような出来事が過去にあったのだろう。
しかもそれを乗り越えての現在の生活。
起床…歯磨き…植物の水やり…自販機でコーヒーを購入し、カセットテープで音楽を聴きながら仕事先へ…。
日々これの繰り返し。
また丁寧すぎるトイレ清掃。
そんな平山の日常をテンポよく映し出す。
寡黙で他人と関わりを持たない、いや持とうとしない平山。
しかし人間嫌いではない。
仕事終わりの銭湯で会う常連さんの姿に笑みを浮かべ、行きつけの大衆飲み屋では店主の『お帰りなさ〜い』の言葉に笑顔で返事をする。
その笑顔には人懐っこさがある。
余計な事を描かなくても平山のこうした行動、表情からその人間性をしっかり表現している。
余計な事は描かないが、隅々まで計算されつくした描写は素晴らしい。
物語の中で…
『この世界は繋がっているようで、実は繋がっていない』みたいなセリフを平山が語る。
今の状況を自分に言い聞かせるように…。
しかし本当は繋がっていたい。それこそが彼の本心じゃないだろうか?
それが出来なかったから、些細な繋がり、繋がりと呼べないような触れ合いの中に『しあわせ』を感じてるんじゃないだろうか?
時々映し出されるスカイツリー。
私がスカイツリーを実際見た時に感じたのは
『孤独』
たくさんの人で賑わってはいるが、遠くからスカイツリーを見た時にあの広い空にぽつんと突っ立ってる姿に『独り』『寂しそう』
そんなふうに感じた。
平山の孤独な日常。そしてスカイツリー。
監督もそんなふうに感じたりしたのだろうか?
まぁ、これは私が感じただけなのかも…。
些細な出来事で少し揺らぐ日常。
けして不快な揺らぎではない。
むしろ平山はその揺らぎを楽しんでる。喜んでる。
そんなふうに描かれてる。
後輩が突然仕事を辞めた時、少し『怒り』の揺らぎはあったが…ww
あ、かなり長文になったのでこれくらいにしときます。
とにかく…
中年、いや初老のトイレ清掃員の日常。
ただそれだけなのに、これほど面白く描く監督の技術、センスに脱帽です。
監督の『日本愛』に溢れた作品。
役所広司さんの『役者魂』に溢れた作品。
ラストの『木漏れ日』の解説も素晴らしい。
好きなシーンは…
アオイヤマダさん演じる女性に頬にキスされたあとの銭湯の平山の顔。
目尻のシワがすごく良い😆
三浦友和演じる男性と影を重ねるとこ。
『濃くなってる』と言い張る平山のセリフ。
『変わらないなんておかしな事はない』的な。
人と人とが交われば、その人生は濃くなる。
私にはそんな風に伝わってきた。
もう一度観てみようと思ってます。
⭐️パーフェクト‼️
なんやかんやで劇場で3回観ちゃいました😊