色んな世界が確かにある。平山の丁寧な生活とそれをドキュメンタリックに、しかも繰り返し撮る。その生活と演出が最高に絡み合っていて一番身心地が悪いだろう最前列の端からでも観ていてとても心地よかった。でもさすがに飽きてきたなぁと思ったところに小さなドラマが配置される。その小さなドラマ同士の配置もまた心地良く、さらに滅多に喋らない平山が時折やけに哲学的な言葉をぽつりと呟く。
静寂に優しく、且つ鋭く孔を穿つその言葉はきっと多くの人の印象に残る言葉になると思う。
極めて自然主義的で即興的に作られているように見えて、もしかしたら絶妙に計算されているのかもと感じさせられる。この地味な内容でいて異常なほどの含蓄があるように感じさせるのはもはやベンダースの経験や役所広司の経験と言わざるを得ないんじゃないだろうか。渋谷のユニークなトイレ達も映画全体に与える視覚的な影響は大きい。平山の様な生活がしたいわけではないけど、平山の様に生きていきたいと思える。
外国から見た日本のパブリックイメージであり、多少誤解されてる部分もあるなと思いつつ、なんだかんだ日本人の多くが理想とする日本人像が描かれている気がする。
あんなに喋らないのも困るけど
