ABBAッキオ

PERFECT DAYSのABBAッキオのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
2023年日本、ドイツ。ヴィム・ヴェンダース監督がユニクロ系列財団の誘いで今の東京の公共トイレを舞台にした映画を制作することに。東京の風景を監督ならではの視点で切りとっている。役所広司演じる平山は公共トイレ清掃人として毎日きちんと寝起きして仕事をする寡黙な男。近所で道路を掃く音で起き、趣味で集めている木の苗に水をやり、朝の空に微笑み、缶コーヒーを持ち込んでVanに乗り、お気に入りの音楽をテープで聴いて仕事に向かう。公園でサンドイッチをかじりながら木漏れ日の写真をアナログカメラでとり、銭湯で汗を流して夕食はいきつけの居酒屋で。夜は気に入った本を数ページ読んで寝る。
 その生活にも触れあいはある。ホームレスで踊る田中泯、同僚で今どきの若者の柄本時生とその彼女、たまにおとずれるスナックのママの石川さゆり、家出して訪れてくる姪とその母である妹、スナックのママの元夫の三浦友和など。大きな事件が起きる訳ではなく、男の背景も明かされないが、東京スカイツリーをシンボルとしながら東京の下町の景色と男のささやかな、しかし本人が生き甲斐と思っている仕事の姿が重なる。
 年齢を重ねて初めて分かる境地がある。この映画は若い人には正直分からないのではと思うが、人生のさまざまな経験を経た後、平穏無事であることの貴重さや生き甲斐とは何かを考えさせられる映画。
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