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PERFECT DAYSのプライのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
毎日のルーティンを守って生きるトイレ清掃員の日常を映したヒューマン・ドラマ。

自分の意識で行うルーティンゆえに変わらないこと。自分の意識外およびルーティン外ゆえに気づく些細な変わり事。変わらずに提供される楽しさと変わっていくことで刺激を受ける楽しさ。2つの異なる楽しさを日々味わっていくのがルーティンに生きることの醍醐味だと分かる作品。本作の監督を務めたヴィム・ヴェンダースのキネマ旬報のインタビューでコメントした「映画は生きる上での理想像をみつける手助けである」の持論の通り、毎日を楽しく生きる理想の生活スタイルの1つを十二分に提示している。

役所広司さんの映し方が秀逸。1つ1つの所作を様々なアングルで映すことで1つ1つの所作に奥行きが生まれ、人間の営みを感じさせる。時折、役所広司さんの1人称を映すことで、観客は役所広司さん演じる主人公の世界と同化する。セリフが少ないのに、今を生きる人間としての存在感を際立たせている。

「トイレ清掃員という汚れ仕事なのに、出てくるトイレがキレイ過ぎる。便器に汚物が一欠片も付着おらず、リアリティに欠ける」とのレビューもあり、私自身も「確かに」と頷く。だが、本作の主人公はトイレ掃除を汚れ仕事と思っておらず、楽しく取り組んでいるように見受けられ、主人公自身にとってトイレはキラキラ光る聖地ゆえに便器を汚す必要性はなかったと思われる。それに、もし「汚れ仕事でも頑張るよ!」を信条に掲げるならば、嫌々ながらもトイレ清掃員を続ける主人公の同僚役の柄本時生さんを主人公にした成長譚になってたはず。なので、トイレがキレイなのも「これもこれで有りだろう」と思ってる。

田中泯さん演じるホームレスの存在が歯痒い。主人公が田中泯さんを見て「今日も相変わらずだなー」と微笑んでる姿が上から目線に見えなくもない。せめて会話を交わして、ホームレスが自身の生き方を肯定する発言をしていればと思った。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐
星の総数    :計18個
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