自分にとってのいい映画とは、観終わったあとに「一体今見たものはなんだったのだろう」と考えさせられる映画だ。その基準からいえば、この作品は間違いなくいい映画だった。
平山という男をどうみるか。社会の片隅で孤独に生きる敗残者と見るのか、自らの状況を受け入れて心静かに、ささやかな幸福を噛みしめながら暮らす男とみるのか。きっと、平山自身は自分のことをどちらとも判断していないと思う。彼は今の生活を決して悪いものとは思っていないが、その一方で時々どうしようもない孤独を感じる。そのことは、映画の中で語られるさまざまなエピソードを通じて描かれる。
ラストの涙はなんなのだろうか。その前日にあった出来事（三浦友和が出てくるエピソード）をきっかけに、自らの孤独を感じての涙？ でも、そんな単純なラストをヴェンダースが用意しているわけがない。では、心穏やかに暮らしていることを感謝してか（神様とかに）？ それもなんか違う気がする。
というわけで、私はこの映画のラストでわからなくなってしまったのです。これはもう一度観なければなるまい。
