Walrus

PERFECT DAYSのWalrusのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
美しい、美しい、美しい。

4:3の画面が美しい。色調が美しい。平山さんの住む世界が美しい。音楽が美しい。ほぼ名前のないエンドロールが美しい。
最初のカセットで60年代の音が出た瞬間はすでに感動した。まさか二枚目はLou Reedだった。

「Sometimes I feel so happy.
Sometimes I feel so sad.」

映画館の椅子でぽろっと涙が落ちた。
シンプルだけど、この映画と一番合っている歌詞だと思った。エンドロールで流れた、同じくLou Reedの「Perfect Day」よりも。シンプルなものが好きな理由は、淡々として、無限に裏付けができる留白が美しいから。

三番目に、Otis Reddingの「Sittin’ on the dock of the bay」が流れてた。至福の時間だった。
次はPatti Smithだった。「この人好きかも」と聞いた平山さんは「そう?」としか言わなかったけど、ニヤッとしてしまった、その気持ちがわかる。そして可愛い。そもそも平山さんというキャラクターがPatti Smithが好きということ自体が可愛い。
そして、大好きなThe Kinks。ビートルズではなくキンクスだったのは、すごく気に入った。
そして何分間も続く最後のクローズアップで、大好きなニーナ・シモンの名曲が流れていた。

繰り返す日々の中でも、木漏れ日を眺めたときや変わった人の不思議な行動を見かけたとき、見知らぬ人たちの日常を覗けたとき、なぜかその一瞬一瞬で密かに幸せな気分になって微笑んでしまうし、その一瞬一瞬の裏に影がつくようについ寂しさも感じてしまう。
「パターソン」の物語も好きだし、似ているけど、「PERFECT DAYS」の方が気に入ったかも。

役所広司さん、演技が素晴らしかった。かっこよかった。
平山さんは全ての要素が魅力的すぎて完全に恋してしまった。
映画館に行ってよかった。
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