ふくやま

PERFECT DAYSのふくやまのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.3
シーンのひとつひとつが綺麗で惚れ惚れする。固有名詞の出し方は『花束みたいな恋をした』より丁寧だし、小さな日常の描き方は今泉力哉作品より自分にとっては全然好みだった。細かい台詞回しも上手。しかしそれと同時に、慎ましく生きることの美徳が描かれているように最初は感じられてしまい、そんな生活を送っていない自分がこの映画を見て楽しんでいることに少し違和感を感じながら見ていた。また、そのような慎ましさの美徳が日本の禅の心と結び付けられているような気も最初はしてしまった。
だが、この物語は決してそのようなプロパガンダ映画ではないのかもしれないと少しずつ気づかされていく。それは、姪や妹の登場だったり平山の生活ぶりから明らかにされていく。平山は選択してあの生活を送っているがゆえに貴族的とも言えるし、資本主義から隔絶された生活にも一見見えるが実際そんなわけない。そして、物語が進むうちにこの映画が与える印象が「ささやかな人生に幸せを見つけよ」からは「ささやかな日常に注意を払って生きてみよう」に変わっていった気がした。だから、別に平山みたいにレトロなものに囲まれたミニマリスト的な生活を送らないでも、本質的には彼と同じような生活ができるはずなんだと思った。
色々書いたけど、上に書いたことはあくまでも自分が感じたことであって、この映画を見た後に思うことは本当に人によって千差万別になると思う。とにかく、この映画が自分の人生を大きく変えるといったことはおそらくないが、それでもこの映画を見た直後の抱いた気持ちは忘れたくないし大切にしたい。

この映画を見た後に渋谷区のホームレスの事情を知ったが、それを知った上でホームレスの人が公園から駅前に移動したシーンは、ただの行政によるホームレスの追放行為にも映るなと感じた。

 
ふくやま

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