Jun潤

PERFECT DAYSのJun潤のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
2024.01.22

役所広司主演の日独合作作品。

近所の神社の住職が掃く箒の音で目を覚まし、歯を磨いて髭を剃って出勤する平山。
彼の仕事は、都内のトイレ掃除。
後輩のタカシの仕事は適当だが、平山の仕事ぶりは丁寧そのもの。
休憩中は木の写真を撮り、仕事が終わると先頭の一番風呂へ。
風呂上がりに行きつけの居酒屋で晩酌をし、帰宅すると読書をしながら眠りにつく。
その日々の合間に見る夢は、理想か追憶か。
休日は作業着の洗濯、撮影した写真の現像、新しい古本の購入、行きつけのスナックのママとの逢瀬。
そんな変わらない毎日を過ごす平山の前に現れた、姪のニコと、スナックのママの元旦那。
彼女達の存在は、平山の日々が変わるきっかけとなる……?

これはだいぶ好きな作品ですね。
役所広司の演技力がまたピッカピカに光っていました。
何か印象的な場面や演技があるわけでもないのに、平山のような人間がこの世界のどこかに確実に居るんだということを感じさせてくれるような存在感を放っていました。

今作を観て思ったのは、現実感がとてつもなくある中に強く印象に焼きつくフィクション感であり、何も無い日々の中に光り輝く人間ドラマでした。
日本の監督が日常を描く映画を制作する場合、特徴的なキャラクターたちが織りなす日常をドラマとして成立させているような印象ですが、今作では何の特徴もない平山が、ドラマ的な展開も何もない日々を過ごしているのに、明らかにドラマとして成立している、何も無いのに映画に必要な全部が存在しているような壮大さを感じました。

平山が生きていたのは木漏れ日のような“今”であり、ニコとママの元旦那が示していたのは平山の日々の先にある“今度”だったんだと思いました。
ママの元旦那との間には同じタバコでむせるという共通点があり、現代っ子なニコはカセットやフィルムカメラ、古本やガラケーに囲まれて暮らす平山に対する相違点があり、平山の“今度”をより強調していたように感じました。
平山が最後に見せた涙は、そんな“今度”に対する希望の嬉しさか、絶望の哀しさか。

そろそろスーツでビシッとキメた役所広司もまた観てみたい。
Jun潤

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