Mariko

PERFECT DAYSのMarikoのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
序盤、何分くらいまでだったかな。
いや銀座線の起点から終点までをトイレ掃除のために軽で首都高使って通勤しないよね、と、どの景色も瞬時に都内の地図と関連づけて思い出されてしまうくらい体に染み込んだものばかりであるがために、しかも結構論議を醸したトイレたちであることも手伝って、どうしても現実が脳裏をよぎってしまって宙ぶらりんになっていた。

これ、東京じゃない、ある種のパラレルワールドか!と気づいたのは古本屋の店主が「幸田文はもっと評価されていいと思うのよねー」と声を発した瞬間笑。犬山イヌコさんの謎パワー凄すぎる。
そこから不思議なくらい世界がスーッと入ってきた。そうこうするうちに、平山自身が「同じ世界に住んでるようにみえて、実は違う世界を生きてるのかもしれない」みたいなことを桜橋(私がよく知る東京ではそういう名前笑)の上で言う。ああやっぱりそういうことか、とますます腑に落ちる。

主人公の「平山」という名前から真っ先に連想したのは、『秋刀魚の味』の笠智衆さんだった。なるほどドイツ人が小津に憧れた世界か、と序盤では思っていたけれど(ドイツ人、自販機とか首都高とか大好きでしょ(笑))、そういう枠組みを借りただけで、結局『トキオ・天使の詩 „Der Himmel über Tokio“』だったのかあ、と思いながらエンドロールを眺めていた。

ちなみに、先にあげたイヌコさん出てきた時も思わず小声で「えっ」って笑っちゃったんだけど、もっと本気で「えっ」って言っちゃったのはあがたさんが出てきた瞬間。だって知らなかったんだもん笑、そりゃ驚く。田中泯さんといい、人の使い方が豪華だなあ。三浦友和は『転々』の福原さんのその後みたいに私には見えた...ってことは相当気に入ったんだな、私(笑)。
Mariko

Mariko