ヨミ

PERFECT DAYSのヨミのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ただひたすら、うつくしかった。

青く、青く、青く、そして光が漏れていた。

“そして人生は続く……”かのように見せながら、リピートするかのような朝を描き伏線にして、「何も変わらないなんて、そんな馬鹿なことがありますか」と叫ぶ。
まるで繰り返し続けるように見えても変化を孕む。それが人生で、生活なのだろう。
蛍光灯が付く音、細い自販機、銭湯で立ち上がる瞬間にお尻に引っ付く椅子。それらが世界だった。世界は繋がっていない、違う世界があるという。その通り、東京のたくさんのレイヤーが見られる。東京に住み続けていると、「東京」はイメージで語られるより複数のレイヤーがあるとわかる。それが映されていた。渋谷のヘンテコトイレ、浅草の地下飲み屋街、首都高、個人商店。「都市は同じ光景に収束していく」というような社会学的箴言に背を向けるように東京を描く。誰もがやってきて通過して、音楽になって小説になってしまう「東京」。港区女子的「東京」、RADWIMPS的「東京」、King Gnu的「東京」。それらには映らない、東京の生活。さまざまなレイヤー。嬉しかった。

俳優がすさまじく、役所広司の役所広司力が画面中にみなぎっていた。そして犬山イヌコは声で一瞬でわかるな。ニャースすぎる。あとモロ師岡を見ると「妹の同級生のお父さんじゃん」と必ず思ってしまう。そして異次元に歌が上手い石川さゆり。全員よかった。完璧だった。

キャッチコピーは下品だ。
こういう生活をしたい、みたいなのは「文化的」で「文学の顔」をした大学生くらいが言うだけだ。その口ぶりに生活はない。これは理想化された仙人の域であり、善性に溢れた生活だ。唾棄すべきものでも賞賛すべきものでもないだろう。パーフェクトデイズ。ただ完璧な日々なのだ。満ち満ちた日々であった。
ヨミ

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