マムトム太郎

PERFECT DAYSのマムトム太郎のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.8
まず東京を捉える造形の美しさに目を奪われた。迷いのない切り取り方。作品テーマにもつながる陰影の捉え方がとにかく見事。シーンの切り替わるごとに完璧な造形の絵が飛び込んでくる。ルーティンワークであるトイレ清掃員の単調な毎日というオフビートなストーリー展開でも絵作りとシーンの切り替えのうまさで非常にテンポ良く見ることができる。ちょっとした街や住居の光の扱いも洗練されている。下町の風景からここまで引き出せるとはと驚いた。
今までの海外監督による東京を舞台とした映画は、どこまでいってもやはり外国人の視点という感は否めなかったが、この映画にはその感覚はない。東京に住む人が街へ感じている愛着や日々の生活の心地よさが見事に描かれている。
人と人との関わり方、距離感の描き方についても妙を得ている。深いところまで干渉せず、でもゆるい人間関係を築けるのが東京の魅力であるということをヴィムベンダーズはよく理解している。この人はほんと日本や東京が好きなんだなと思った。
東京という大都市に懐の深さに支えられて、細々とながらも平穏に過ごす平山の生活にはどこか陽炎のような危うさも感じられるが、それを持って「パーフェクトデイズ」と言わしめる監督の諦念がこの作品のなんともいえない奥深さを作り上げているように思う。