Sachiko

PERFECT DAYSのSachikoのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
良かった。
本当に良い映画だった。
久しぶりに良い映画を観た。

スカイツリーのすぐ近くの大都会で ボロボロのアパートに住み 都会的なデザインの公衆トイレの清掃をする。

沢山の人々が住むこの世界で 一人一人 別の世界に住んでいる。本人がその世界に満足していれば 他にどんな世界があったとしても本人はそれで幸せなのだ。

仕事のある日の 朝起きてから寝るまで、休みの日の朝起きてから寝るまで。全てが事細かく決まっている。いわゆるルーティンみたいなもの。そのルーティンに関わる人たちみんなが介入してこないし 喋らなくても通じあってる。居心地の良い世界。これこそが完璧な日常。パーフェクトデイズなのだ。

このルーティンに関わる役者さんたちが また素晴らしい顔ぶれ。それぞれ主役をはれる俳優さんたちが 主人公の生活の一コマのルーティンとして度々でてくる。

もちろん まったく同じルーティンが繰り返されるかというと そんな訳にはいかない。少しずつ何かは変化する。でも それを受け入れて淡々とルーティンをこなしていく。

ほぼ喋らない役所広司の表情。目元だったり口元だったり 言葉で説明しなくても いや、言葉で説明しないからこそ 伝わるのかもしれない。

公衆トイレの清掃?と眉をひそめたり 汚いものを見るように扱ってくる人もいる。でも 清掃に誇りをもって働き 工夫をしたり 少しの変化を楽しんでいる姿は だらだらとやりたくない仕事を文句ばかり言ってる人とは比較にならないくらい尊いものだと思う。そもそも職業差別自体おかしいことだけど 主人公はそれも受け入れている。

そして 他にどんな世界があったとしても 本人は今の生活を満足して楽しんでいるのだから 他の誰に何を言われる筋合いもない。だって自分にとって完璧なのだから。

その完璧な日々が送れることに感謝しなければならない。いつもと同じことの繰り返しを続けることの方が難しいのだ。どうしても突発的なことは出てくる。でも それを受け入れて 困ったり楽しんだり悲しんだりする。ほとんど喋らないけどコミュニケーションが取れないわけではなく人情味があり 懐の深い人間である。

主人公が今までどんな人生を送ってきたのかは明らかにされなかったけど 今の主人公の生活をみていれば その人となりが現れてるし 人間っぽいし 今を生きてるんだと感じられる。

私も ほぼ主人公と似たような暮らしをしている。他の人がどう思おうが 自分にとってこれ以上ない快適な暮らしなのだ。でも やはり日々 色んな出来事が起こり 平常心ではいられないこともある。それでも 淡々とルーティンをこなすことを生き甲斐に幸せに暮らしている。

今度は今度。今は今。
本当にその通りだと思う。

初めあまりにも淡々としてて 何も変化が起こらず これを観た海外の方が高い評価をしたって凄いなと思ってたけど、後半 どんどんと引き込まれ 最後の主人公の笑ってるような嗚咽とも捉えられる役所広司の表情に 全てが詰まってる気がして 今 思い出しただけでも泣けてくる。

幸せって自分が決めるもの。他の誰かからみた私の人生はくだらないものかもしれないけれど 私が今 自分の生活に満足していて 明日に繋がっていけば これ以上の幸せはない。

まさにパーフェクトデイズである。
Sachiko

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