MMM

PERFECT DAYSのMMMのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

セリフがないままトイレ清掃員の日常がどんどん進んでいく。
セリフはないのに、役所こうじの表情や行動だけで、平山の生活や趣味などの人となりがきちんと感じられる。
トイレ清掃員という皆んながあまり好ましく思わない仕事をしていて、でも平山は贅沢ではないにしても別に貧困というわけでもない。日々の生活には困らず、少しの楽しみを持てるぐらいの生活水準。
どこにでもいそうな、きっと日本にたくさんいるであろう普通の男性。
毎日働いては寝て、また朝が来て。同じような毎日だけど、少しだけ変化していく毎日を過ごすのは、ほとんどの現代日本人に当てはまる生活だと思う。私の毎日は平山よりももっと同じことの繰り返しで退屈なぐらい。

平山はほとんど何も語らないけど、若い子にキスされて嬉しそうにしてたり、自分の好きなものを肯定されて嬉しそうだったり、女将のことを密かに好いてて、でも元夫の登場に嫉妬してヤケ酒したり表情で感情がわかる。平山ってごく普通のおじさん。終盤はなんだか可愛く見えてきた。でも平山の過去には何かがありそうで、でもそれは語られなくて、色々想像してしまう。
「今度は今度、今は今」。きっと過去は過去ってことで、今以外についてはこの映画では語られない。なぜ清掃員の仕事をしているのか、なぜ家族と疎遠なのか。
この映画のテーマは「今」なんだろうな。
ベンチに座ってる女性や、公園にいる変なポーズしてるおじさん、きっとその人たちにも見えないところでその人たちの物語とか過去とか未来があるけど、今以外のことは何も語られない。
平山が「今」を切り取るように毎日木々の写真を撮影してて、押し入れにその写真がびっしり何年ぶんも保管されていたのはちょっと狂気を感じた。
平山のラストの涙の意味はなんだったんだろう。もっと考えたい

とても共感できる部分もあり、なんとなく癒される映画でもあった。
今度トイレ清掃員の人とすれ違ったらちゃんと挨拶しようと思った。
MMM

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