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PERFECT DAYSのNnのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.7
私にとっての奇跡みたいな映画だった。
映る東京の風景全てが、私に関わりのある"東京"ばかりで、それが本当に運命的に思えて、奇跡みたいに嬉しい映画だった。

私が見てきた、そして見ている景色が、好きな監督によって切り取られているなんて、そんな幸せなことがあっていいのだろうか?

映像に収められた地域・音楽・視線の先、それら全てが、たまたま私の生活の延長線で、きっとこの映画を超える作品に出会うのは難しいのだろうと予感させられてしまった。

海外で映画を撮る場合は会話劇を軸に話を進ませづらいというのは前提にあるけれど、ASMRや生活音界隈というようなコンテンツが動画プラットフォームにたくさん投稿されているこの時代に、そういった要素を持ち出して本作を撮っている監督の感度の若さ具合というか、時代を咀嚼している感性に感動してしまった。
シャンタル・アケルマンの『ブリュッセル〜……(ジャンヌ・ディエルマン)』のあの質感を令和で、そしてヴィム・ヴェンダースで見られるとは、という感覚もあった。

私の心の余裕具合は、私の写真フォルダに現れる。
木々の写真。水面の写真。マンションから撮った夕日の写真。
これらがほとんどフォルダに現れない時期は本当に自己を社会の中に落としてがむしゃらに生きてるとき。
そして私も身内に言われたことがある言葉がふと出てきて、この作品と私の境目が曖昧になったのだけど、とても幸せな気持ちになれた。

この人絶対名付けようのない踊りの人だよね…………?(まだ観てないけど)と思ったらやっぱりあってたーー!
海外監督が日本の俳優でとると、いつメン的な感じとか派閥っぽい感じが出ないのでキャスティングもすごい面白かった。
TOTOってこんなデカくエンドロールで見ること、あるんだなぁ笑

劇場で見ていて危なかった話。
姪のにこちゃんが「ヴァンモリソンってSpotifyにあるかな?」って聞くから、バカでかい声で「あるよ!!!」って答えそうになった。危ない。ってか小声で絶対言っちゃってた。

個人的な感受性の話を持ち出すと、
映画版『ちひろさん』がちょっと「あ〜なんか惜しい〜💦(上から目線ですみません)」って感じだったのと、
最近の『朝がくるとむなしくなる』が、「ここで泣いて励ましてほしいわけでもないんだよなぁ(鑑賞者のエゴでごめん)」って感じだったんですよね。
だから、前2作品でも描かれようとしていた「自分の幸せをおざなりにせず見つめながら、他者・社会を尊ぶためには?」という主題に対して、ヴィム・ヴェンダース×役所広司で以て解を出そうとしてくれたことに感謝が止まらない。

というか、私は多分、街と人の見つめ方を、ヴィム・ヴェンダースから教えてもらったんだと思う。
だから、この作品が解に思えたんだと思う。
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