Shussissi

PERFECT DAYSのShussissiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.1
@品川プリンスシネマ
ドイツ人のヴィム・ヴェンダース監督による、舞台も全ての役者さんも話されてる言葉も日本の映画。これはやはり洋画ではなくて邦画ですよね?前日に全然違うイタリア映画の「弟は僕のヒーロー」と言う、「実話を元にした感動作だけど映画としてのギミックや深みは無い」と言う映画を観てたので、その対照さが面白かったです。このPERFECT DAYSこそ映画っぽい映画と言えるのでは無いでしょうか。映画好きであればあるほど評価が高そうな気がします。
とりあえずいちいち伏線に答えを求めるのではなく、身体全体で感じとる。そうすればこの映画の世界に入り込めるのでは無いかな、と思います。実際途中からそれに成功した私は、無事に最後のシーンで浸る事ができました。
しかし役所広司さんが凄すぎます。この映画は彼の為に有ると言うか、彼以外じゃ成り立たない気がします。本当の役所広司さんの人生がこれで有っても違和感が無い気が…他を固める役者さんたちも非常に適材適所でした。また、時代や場所の表現もオシャレ。家の内部シーンだけだと昭和でもおかしくない感じですが、スカイツリーがあったりiPhone出てきたりでさり気なく現代をアピールしています。そんな現代でも、「普段は脚光を浴びる事なんてあるはずも無いトイレ清掃員さんの日常」をただ追いかけるお話。それだけ聞いていると面白いはずも無いのに、なぜだかメチャクチャ面白いです。最初、同じルーティンを繰り返す事で逆にこの後は何か起こるに違いないと思わせられ、実際そこから様々な角度に引き込まれていきます。しかし、都内も渋谷周辺にあんな綺麗でオシャレな公衆便所があるんですね。中から色が変わるやつは、あれは実在なんですかね!?本当なら聖地巡礼が増えそうです。
まぁ細かい事を言うと、主人公が毎日いっさい鍵をかける仕草を見せないけど、ニコのお母さんが連れ戻しに来た時は閉まってるだとか、突然来たニコにおあつらえ向きのチャリがすぐ用意されてるとか、ツッコミどころは多々あるモノの、そんな詮索は陳腐だと言わんばかりの壮大な映画感です。間違いなく過去に色々有っただろう1人の男の、飾らない日常の生き様。無駄に喋らなくても存在が逆に際立つカッコ良さ。なんこの日本で生きていくには、って言うことを考えさせられます。
「この世界は繋がっているようで、実は全く相いれないように切り離されてる」と言う言葉が非常に心に残りました。20年前に自分がこの映画を観たら、また感じ方は全然違ったでしょう。と言うことは、また10年後ぐらいにこの映画を観てみても面白そうです

「今度は今度 今は今」
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